BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【薔薇百合短編募集中!】 クリスマス企画 【オリ版権問わず】 ( No.20 )
日時: 2010/12/04 21:56
名前: あゆ ◆x/5HQXA.iA (ID: jxsNqic9)

+.「静かな部屋にうるさい心臓」[2]


「……で?」

 静まり返った部屋。目の前にはバツの悪そうな顔をしたリオン。左手はしっかり氷で固定して、傷には消毒液。
 なんでこんな状況になってるか?答えは簡単。ひとしきり大騒ぎした後揃って連中がリオンを俺の部屋に運び込みやがったからだ。

「なんで大人数と戦ったんだよ?」
「……ウルが戦った人数より多い人数と戦いたかった」
「馬鹿かお前」

 イライラしながら理由を問うと、リオンらしい返事が返ってきた。どうせ馬鹿だ、と不貞腐れた様に呟く。ぷいと横を向かれてしまった。

「あのな、ボロボロだろ。お前自分がどうなるかとか考えなかったのか?」
「……考えなかった」

 あっさり肯定。ホント、馬鹿だ。ウルの事しか考えてない。

「これで、ウルを一つは超えられた……」
「あーさいですか」

 前言撤回。ウルの事以外何も考えてねーなコイツは。仮にも探してやったんだからもっとしおらしい態度とれや、と言いたかったがぐっと我慢する。我ながら我慢強い弟弟子だ、と自画自賛。

「ウル、を……もう少しで、超え、る……」
「あ?リオン?」

 リオンの首がかくん、と折れた。え、ちょっと待て。

「リオン?リオン!?」

 ゆっさゆっさと揺さぶってみるけど、起きない。死んだとか……無い無い。思わず脳裏をかすめた不吉な考えを取っ払い、ひたすら肩を掴んでゆさゆさと揺さぶってみる。……起きない。
 すぅ、と小さな息がリオンの口から漏れ、俺はようやく安心した。

 「……ホンット、馬鹿だな」

 小さい頃からウルは最強だって言い張りやがって。ウルを超えるためになら、ってデリオラまで復活させて……。
 こんな傷だらけになってまで、頑張って。

「可愛い弟弟子の事ぐらい、考えやがれ」

 ピンッと兄弟子の額をはじいたら、夢で嬉しい出来事でも出てきたのかリオンは少しだけ笑った。
 相変わらずなんかムカつくなー、とか思ってみる。


( 静かな部屋には、 )( 一人のうるさい心音と一人の柔らかい心音 )



【End】