BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

§涙で滲んで見えない ( No.200 )
日時: 2011/03/05 15:17
名前: 祐希 (ID: xJuDA4mk)
プロフ: バレンタインの前に別お題←。のーまるでふ。

銀魂/沖田*神楽

//届かない



「なぁチャイナ」
「……何アルか」


重々しい空気が漂う公園のベンチにて、沖田と神楽は ぽつりと話し始めた。


「お前、好きな人いるんだろぃ?」
「——ん。いるアル」


『いま目の前にいる、お前』……とも言えずに、神楽のなかで燻る——密かな恋心。
要するに、片想いだ。
もちろん好きなことには変わりはないのだが、その気持ちを言葉に出しづらい。
沖田も神楽も、傍から見れば仲良さげに見えるのだけれど。
——お互いは気付いていなかった。
むしろ、仲が悪いことで評判だろう——と、そう考えていたのだ。
そうなると、生半可に告白なんてする気も起きなくなり。
——終いにはまた心で燻らせているだけ。


「……誰、って聞いても怒らねぇ?」
「……サディストも教えてくれたら言ってやってもいいネ」
「ふうん……」


沖田もまた、同じ気持ちらしく。
神楽がそんなことを考えているなんて夢にも思わずに、寂しげに睫毛を伏せた。
神楽もまた、同じようにして睫毛を伏せて。

恋人同士になれないなら、ずっと友達でいるのは可能なはず。
——それでも不安な恋心。
いつ動き始めるか分からないほど、大きくなってしまった恋心。
だからこそ、この気持ちは——この気持ちとは、離れるべき、だと。
考えたのは、どちらが先だったのだろうか。


「俺ぁ、姉上がずっと好きなんでぃ。きっと、これからも」


すっくと立って、歩を進める沖田。
歩くたびにこぼれ落ちそうになる何かを、留めるのに必死で。

——振り返っちゃ駄目だ。
——あいつの顔を見たらまた、気持ちが何もかも溢れだしてきそうになるから。

公園を早足で出て、それからまた屯所までひたすら走り続けた。
——涙の痕を、頬につけないように。


 *   *


「何だ、アイツねーちゃんのこと好きだったアルか……ははっ、言わなくてよかったアル」

ひとり公園に残っていた神楽は、そうつぶやいた。
もう、そんな言葉も届かないほど、遠くにいる沖田に向かって。

「もう届かないって、分かってるけど——」

——零れ落ちてくるものと、それと正反対な言葉をつぶやく唇。
そして気付いた。
自分がこんなにも、あいつのこと好きだったことに。
素直になれない自分が嫌で仕方がなくなった。
あの言葉を聞いたとき、自分がどう返答していれば、君に正直に言葉が伝えられたのかな。
それさえも、分からなくなって。



——早足な君の背中が、


( 涙で滲んで見えない )



二人の想いは同じなはずなのに、交差しないまま解けていった。
——きっと、もう一生届かない想い。