BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【薔薇百合短編募集中!】 クリスマス企画 【オリ版権問わず】 ( No.73 )
日時: 2010/12/28 21:38
名前: 刻鎖/あと3日! ◆KokuskA/To (ID: 9yCTBNZC)

■きれいなひとみ



「……姫?」
「…………バル、ゴ……?」

 いつも、バルゴはルーシィが寝ただろうというころに、自分の魔力でこちらにきている。掃除をしたり、机に突っ伏して寝てしまった所有者をベットに運んだり、……何より、彼女の小説をこっそり読むのが好きだった。
 今日はどのくらい話が進んだだろうと思いながら、静かに自分の扉を開いた。

 ——驚いた。
 いつもは寝ているはずのルーシィが、起きていたのだから。部屋の電気もついたいたし、顔を覆っていた。

 思わず声をかけてしまう。
 振り返ったルーシィの顔に、更に驚く。だって、彼女の瞳からは大粒の涙が溢れ、頬を伝い、机に水たまりまでできていたほどだったのだから。

 目も真っ赤に腫れてしまっている。


「……なん、で…………ここにいる、の……?」
「姫の様子が気になったので」

 とっさに嘘をつく。まあ嘘ではないのだから、いいだろう。〝小説を読みに来た〟なんて口が裂けてもいえない。

「…………」

 ルーシィは、次々と溢れでてくる涙を拭うと、バルゴから、視線を床へと移した。
「バルゴ……、愚痴だと思って、聞いてくれる?」
 またバルゴへと視線を移すと、無理矢理に笑顔を作って尋ねた。

「私でよければ」

 そういうと、ルーシィは安心したように涙を止めた。

「あたしね、大好きな人がいたの。……でもね、今日ね、その人がね…………っ」
「……大丈夫ですよ、姫」

 再び泣き出したルーシィの背中を、バルゴは優しくさすった。


「ただの、事故ですよ」
「……っ、うん…………」




 * *

 何も言わなくても、いいんです。
 辛そうな顔しないでください。悲しそうな顔しないでください。

 その美しい瞳を、絶望の涙で汚さないでください。