BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

#【坂本×高杉】 ( No.56 )
日時: 2011/03/23 13:59
名前: つんさど ◆GAcxLZeYnw (ID: BJQqA4RR)
プロフ: 辰馬の口調が掴めん

『いくら泣いたって構いません、思いっきり泣きなさい』
『もし、おまえの涙が枯れたら』
『私はこの声が枯れるまで、おまえに愛を叫び続けますから』
『だから——もう孤独だなんて思うんじゃありませんよ』


≪この涙が枯れるまで≫




「——辰馬、お前いつまで地球ここに留まるつもりだ」

高杉は屋形船の窓枠に座り、煙を吐き出して言った。
煙管が月明かりに照らされて、鈍く光る。

まるで女を思わせる、美しい目鼻立ち。
艶やかな声。
乾いた瞳。

それら全てが愛しいかのように、坂本は

「なんじゃ、おまんはそんなにわしに出て行ってほしいがか。
 生まれ育った故郷に帰ってくるくらい、いいじゃなかか。
 アッハッハッ」

高杉を真っ直ぐ見て、冗談らしくそう言った。

瞬間、高杉の態度が変わった。
高杉は肩を震わせ、何かに怯えるかのような目になった。
そして、


「お前は____どうしていつも・・・笑っていられるんだよ。」

そう言って、顔を背けた。
高杉の震える声に、坂本の顔が強張る。
顔をこちらに向けこそしないが、今の高杉の表情・思考は手に取るように分かった。


                         ——あの時を思い出している。

「おまん、まだあの人のこと・・・忘れられないがか」
「…………。」
「それなら、忘れないでいい。おまんのその隻眼に、しっかり刻み付けておけ」
「……お前に言われなくても、あの人のことは忘れる気なんてねェ。」

高杉は、そう言って全ての思いを晒した。

全て語った高杉は、いつの間にか顔が、袖が、濡れていた。
だが、それでもなお高杉の瞳は乾いていた。

「…っく……情けねェな、こんなことで泣いちまうなんてよォ…。
 所詮、俺には孤独がお似合いだったんだ。………辰馬、笑いたきゃ笑え」

辰馬は笑わない。それどころか…。

辰馬は、高杉を優しく抱きしめた。
背後に感じる突然の温もりに、高杉は目を見張る。

「いくら泣いたって構わんき、思いっきり泣け。もし、おまんの涙が枯れたら、
 わしはこの声が枯れるまで、おまんに愛を叫び続ける。
 だから——もう孤独だなんて思うな」


懐かしい言葉、懐かしい面影を、高杉は感じた。

この後の辰馬の言葉で、高杉には笑顔が戻ってくるのである。