BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 初恋は君だった 【BL】 ( No.100 )
- 日時: 2011/04/10 20:42
- 名前: 雲雀 (ID: aU3st90g)
- プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=g3Mz5EGEbVk
「______ここをまっすぐに行けば、霧崎さんの家に戻れるよ」
そう言って、祐稀は山道の途中で足を止めた。
山道と言っても、周りにはもうほとんど樹木はなく、すぐ行ったところに民家が見えるような道だった。
唯も下げていた視線を上げ、安堵したように頷いた。
その事を確認すると、不意に祐稀が繋がれていた手をほどいた。
唯が不思議そうに祐稀のことを見つめると、彼は少し寂しそうに言葉を紡いだ。
「ごめんね……僕、急いで戻らなくちゃいけないから……この先には行けない」
「どうして……?」
再び涙が溜まっていく瞳で、唯は祐稀を見つめ続ける。
一緒に来てほしかった。ほんの少しの間、傍にいただけなのに。
離れたくなかった。
「僕ね、今日引っ越すの。お父さんとお母さんはもう村の外で待ってるはずだから……近道で行かないと間に合わない」
「じゃあ……もう会えないの……?」
唯の白い頬に、大粒の涙が伝っていく。
拭われることのないそれは、顎を滑り落ち、地面へと吸い込まれていく。
「…………」
「…………」
それからしばらくの間、沈黙が続き______先に口を開いたのは、祐稀だった。
「また会えるよ」
そう言って、薄く微笑んだ。
その笑顔が優しくて、切なくて______また涙が溢れてくる。
「唯」
ドクン
鼓動が少しだけ、速まった気がした。
「……何?」
嗚咽を混じえながらも、なんとかそう言葉にする。
「______また会おうね」
その言葉が、今は何よりも唯の心に響いた。
◇
一期一会ということわざを知った。
『あなたとこうして出会っている時間は、もう二度と巡ってこないかもしれない。だからこの一瞬を何よりも尊きものとして大切にし、二度と会えない覚悟でその人に接しなさい』
本にはそう書かれていた。
では、自分と彼はどうだったのだろうか、と思う。
あの時はこんな言葉を知らなかったから、そんな覚悟、出来るはずもなかった。
______また会おうね。
あんな無責任な約束を残してしまった自分を、彼は恨むだろうか。
それとも、もう忘れてしまっただろうか。
そうだったとしても、きっとこの想いは消えることはないだろう。
強く、そう思った____________
◇
「______うん、また会おう」
そう言って、唯も微笑んだ。
涙の筋が残るその笑顔は切なくて胸が痛いけれど、花のように美しいそれは、祐稀の心の中に優しい熱を残した。
折角笑ってくれたのに、唯の瞳には再び涙が堪る。
「絶対だよ……っ、絶対……約束だからねっ……!!」
涙を流しながら、彼はそう告げた。
何か言葉をかけたくても、何を言えばいいのか分からなかった。
涙を拭いたくても、拒絶されるのが怖くて、その白い頬に手を伸ばすことが出来なかった。
「バイバイ______」
互いの想いを告げ合うことのなかった僅かな逢瀬。
まるで二人の秘め事のように与えられた玉響の時間。
再び巡り逢えるのは、それから数年後のこととなる____________
(また会おうね)(確かにそう約束したから)
今でも信じていられるんだよ。