BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 初恋は君だった 【BL】 ( No.101 )
日時: 2011/04/21 23:20
名前: 雲雀 (ID: aU3st90g)

______高2になって、初めての昼休みだったと思う。
教室は人が多くて、そんな中で食事は取りたくなかった。
そう思うと、やはり足は屋上へ向かってしまって……気付いたら、屋上の扉の前にまで来ていた。

______あいつ、来てるかな。

頭の中で、無意識に出てくる顔。
その事実が恥ずかしくて、急いで頭を振った。
扉を開くと、清々しい春の空が、自分を出迎えた。少しずつ、桜の花びらが混じっているのが分かる。
頬を撫でる風は心地よく、陽の光の優しさに目を細める。
その優しい景色の向こうに、彼はいた。

『絵みたいだ』

そう思わずにはいられないほど、美しい横顔だった。
屋上の手すりに肘をつけて、頬杖をつきながら、ぼんやりと空を見上げている。
相変わらず、絵になるほどの美形だな______心の中で静かにそう思いながら、その人物に近づく。

「祐稀______」

そう声をかけると、祐稀は嬉しそうにこちらを振り向いた。

「来ると思った」

そう言いながら、柔らかく微笑んだ。
艶のある銀髪は風に靡き、陽の光を受けてより一層輝いていた。

「なんで……」

分かったんだ。と聞き返す前に、祐稀が口を開いた。

「教室は人が多いから、絶対に来ると思った」

だから待ってたんだ。と最後に言って、再び空に視線を向ける。
今日の空は綺麗だった。青くて、高くて、澄んでいて______人の目を惹き付けるように美しかった。
だから、少しだけ悔しかった。

「空バカ______」

あいつの目が、空しか写さないのが。

「だって空好きだし」

そう言って無表情の顔に笑みを浮かべる。
胸が少しだけ痛んだ気がした。

好き______

遠い昔に、この想いと同じ想いを抱いた記憶が在った。
そして恐らく、今も____________



「______のに……」

二人が、同時に何かを呟いた。
でもその小さな呟きは、互いの耳に届くことはなかった。

【愛せたらいいのに】

それは、儚い願い。
幼き日の逢瀬と重なる。

(______……だから、惹かれたんだ)

でも、伝えてはならないから。
それでも__________________________________________



「   今でも好きだから   」
(せめて、この想いだけは、伝えたい)
果たせない約束を、想いと共に託した。