BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: タイトル未定【BL】 ( No.24 )
- 日時: 2011/02/23 21:02
- 名前: 雲雀 (ID: MLajaLHR)
第4章
「______修哉〜、英語教えて〜」
気の抜けるような漂々とした声が、昼休みの教室に響く。
声の主を視線で辿れば、やっぱりか、と少しため息をつきたくなるほどに予想的中。
「錦……この前の英語の小テストで満点じゃなかったか?」
葵は教える意味のない人間+教えるのは苦手という理由から、少しだけ反抗してみる。
効果はどれほどあるものか。
「小テスト?そんなのあったっけ?」
…………。
結論、反抗しても無駄。
「てゆーか、小テストと学年末テストじゃかなり違うでしょ?」
だから教えてもらうんじゃん。と、葵は小さく笑った。
修哉ビジョンで見ると、この笑顔はかなり黒い。
「はいはい……で?どこ教えればいいんだ?」
修哉は無くしかけた気を取り直し、英語の教科書を机にかけてあるサブバから取り出す。
「んーと……あれ?英語の範囲って何ページだっけ?」
その一言で、葵が修哉に止めをさした。
一切の慈悲も何もなく、バッサリと。
「教科書P67〜P90」
凛とした涼やかな声音。
声のした方を振り返ると、こちらも予想的中というべきか、祐稀が静かな瞳で修哉達を見下ろしていた。
「う、わッ……、……驚かすなよ。祐稀」
修哉が不服そうに祐稀を見上げる。
葵の方は相変わらずにこやかな笑顔で、
「修哉の驚いた顔〜♪」
と言いながら、携帯で修哉の表情をおさめていた。
「悪い、困っているみたいだったから……」
「まぁ……困っていると言われれば、根本的な意味からして困っているような気がする……」
修哉が苦笑を浮かべて視線で葵を見るように促す。
「錦が英語教えてくれって言ってるんだが……生憎、俺は教えるのが得意じゃないし……」
だからどうしようかと思ってたところだ。と、今度は吐息だけで笑った。
祐稀はしばらく口に手をあてて思案顔になり、やがて「あ」と小さく声を漏らす。
「唯に教えてもらうのはどうだ?あいつも頭がいい……」
あー……、と、修哉は少し唸るように息を吐く。
「唯は錦と相性がよくないんだよなぁ……」
だからあまり引き合わせたくない。と補足し、再び苦笑する。
祐稀が心中で確かにと呟きながら葵を見ると、
「唯にメール送ったよ。【勉強会やるから放課後図書室集合】って」
……時すでに遅しというのはこういう事か。
というか、お前話聞いてたのか。
修哉と祐稀の間では、葵への懸念が尽きないのであった。
◇
数十秒後、葵の携帯から音楽が流れた。
「唯からの返事だ」
葵はご機嫌な様子で携帯の画面を開く。
「えーっと……何々?」
彼が淡々と唯からの返事を黙読している中で、修哉は欠伸をしながら机に突っ伏し、祐稀は窓に背中をあずけ、読書を開始する。
「ククッ……」
葵が小さく笑い声を洩らした。
どうやら、唯からの返事を見て笑っているらしい。
「何……笑ってる?」
「何か面白いことでもあったのか?」
二人の視線が葵にだけ注がれる。
葵は「うん」と満面の笑みで二人に言葉を返した。
「唯にさっきの文章と一緒に修哉の寝顔写真送ったら【悪趣味】って返されちゃった♪」
俺的にこれ日課なんだけど。と、半ば危険な発言をさらりと言ってのける葵。
「それと勉強会の方だけど……いいってさ。ただそのかわりかなりシゴくから覚悟しろって」
葵はクスクス笑いながら「じゃ、俺帰るね〜」と短い別れの言葉を告げ、教室から出て行った。
「……錦に苺サンド奢ってもらってくる」
修哉は椅子から立ち上がると、ダッシュで葵のことを追いかけていく。
祐稀は修哉の椅子に腰をかけ、読書を再開する。
こうして、穏やかに昼休みは過ぎていった。