BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: タイトル未定【BL】 ( No.32 )
日時: 2011/03/05 13:58
名前: 雲雀 (ID: MLajaLHR)

完全下校時刻まで残り40分、茜色に染まる図書室の静寂の中で、シャーペンの音だけがひたすらに響いていた。
【錦織に英語を教える】という肩書を持っていたはずの勉強会だが、当の本人は余裕そうな顔をして問題を解いていく。
初めのうちは真面目に葵のノートを見ていた唯だったが、特に教えることもないので、今は読書を開始している。

パラパラパラパラ…………

カリカリカリカリ…………

本のページをめくる音、ペンをノートに走らせる音。
この二つの音が重なり合い、やがて黄昏時の静寂に紛れていく。
そのような状況の中、図書室の扉が静かに開かれた。

「唯……っ、まだいたのか……」

少し驚いたような顔をした祐稀が、唯の姿を視界に入れた。
と同時に、葵がにこやかな笑みで「俺もいるんだけどなぁ」と祐稀に向かって言っていた。
祐稀という意外な来客のため、図書室が少しだけ騒がしくなる。

「祐稀……お前も呼ばれてたのか?」

唯が視線を本の文字から外し、視界に祐稀の姿をみとめてからそう聞く。
そんな唯の言葉に、祐稀は淡く微笑んだ。

「呼ばれたというよりは……心配だったから来た」

錦織に変なことはされてないか?と、心配そうに唯のことを見つめる。
まるで年頃の娘に彼氏ができないかと心配する父親のような行動に、唯は思わず笑みを漏らした。

「お前バカじゃないの……っ」

必死に堪えてはいるようだけれど、全身が震えている。
心なしか、目も少し濡れているような気が。

「やだなー、俺が唯に手ェ出すわけないだろ♪」

面白いものでもみるように、葵は祐稀を見る。
祐稀は首を傾げて、

「何か面白いことでもあるのか?」

と眠そうな目を葵に向けるのみ。

「______そういえば、修哉は?」

葵が思い出したようにそう問えば、祐稀は「寝ていたから知らない」と返す。

「なぁ、錦織の星座って星占いで今回どんな結果だった?」

笑い声を滲ませた唯の声音。
結果なんて本当はどうでもよかったんだけど、ほんの少しだけ、こいつの声が聞きたくなった。

「ん?水瓶座か?確か______」

静かに低く響く、この優しい声音を。