BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: タイトル未定【BL】 ( No.6 )
- 日時: 2011/02/16 20:44
- 名前: 雲雀 (ID: MLajaLHR)
第2章
「______あれ?錦、今日一人なんだ?」
食堂でたまたま見つけた友人に、少年は声をかけた。
月見うどんを惜しみもなく頬張りながら、葵は少年を見上げてくる。
「ん、修哉か……。まぁね、たまには一人もいいかなぁって」
修哉と呼ばれた少年は、そのまま葵の真正面に腰をおろす。
「お前が一人になりたいと思っても、女子は放っておかないんじゃないか?」
お前モテるし、と付け足して、そのまま答えが返ってくるのを待った。
しばらくの間、葵は修哉のことを見つめていたが、やがて深くため息をつき、
「女子にはモテなくてもいいんだけどなぁ……興味無いし」
と小さく呟いた。
どこか、自分の心中を隠すように。
「それはお前がモテてるから言えるんだろ、僻まれるぞ?」
売店で買ってきたと思われる苺サンドを口に運びながら、修哉が言葉を紡いだ。
しかし【モテている】という面では、二人とも同じだろう。……女子のあしらい方が違うだけで。
「ていうかさ、それなら修哉の方が気をつけるべきだよね?女子の前で普通に寝てるし」
「俺?なんで俺がそんなのを気にしなきゃいけないんだ?」
______女子にモテているという自覚がないのは分かった。非常によく分かった。
だからと言って、このまま野放しにしておいていいんだろうか。
そんな考えが、葵の脳内を巡る。
「なんていうか______」
「…………」
修哉が妙に静かになった。
不思議に思い、「修哉?」と名前を呼んでみる。
「……すー……」
…………。
もうやだこの人。葵は心の中で、深くそう思った。
睡魔に負けたのだろう、穏やかな寝息をたてて眠っていた。
「______あ、唯」
自分達の横を完全に通り過ぎようとしていた唯の姿を見つけ、葵は声をかけた。
唯は酷く顔を歪め、「ばれたか……」とボソボソと何かを呟いていた。
「で、こいつはまた寝てるのか……」
修哉の寝顔見ながら、唯が深くため息をつく。
「みたいだね」
どうせなら写メでも撮っておこうと思い、ポケットから携帯を取り出す。
本来人の寝顔を撮るのは非常識なことかもしれないが、彼に常識が通じないということを唯は知っていたので、あえて何も突っ込まなかった。
パシャッ
「ん、いいのが撮れた♪」
葵はご機嫌な様子で携帯の画面を眺める。
長い黒髪に、切れ長の瞳を縁取る長いまつ毛。
整った顔立ち、女性のような細くて白い指______。
寝ていても、美形は美形だった。
「______悪趣味だな」
小さく悪態をつく。
「あはは、唯酷いね。もうちょっとなんかないの?」
「じゃあなんだ?盗撮者とでも言ってほしいのか?」
そんな小競り合いをしていると、目の前の修哉が重たい瞼を開き始める。
黒い瞳が、眩しそうに唯を視界にとらえる。
「唯……?いつから来てたんだ……?」
来てたなら、起こしてくれれば良かったのに。と、少し拗ねたように眉間にしわを寄せる。
「唯と秘密の話してたんだー♪」
「…………」
そんなものしていない。
口には出さずとも、唯の瞳がそう語っていた。
視線のみで人を射ぬけそうなほど、鋭い目つき。
それが全て、葵に向けられている……葵は平然としているが。
「じゃ、俺次移動教室だから。もう行くね」
バイバイ、と簡単な別れの言葉を残し、葵が席を立つ。
______あいつは本当に掴みどころのない人物だ。
この日、二人は改めてそのことを思い知ったのだった。