BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 初恋は君だった 【BL】 ( No.78 )
- 日時: 2011/03/29 21:59
- 名前: 雲雀 (ID: aU3st90g)
瞳から、熱いものが零れ落ちた。
それは頬を伝い、顎に届くと、濡れた感触を肌に残し、更に下へと滑り落ちて言った。
自分自身で触れる前に、葵の色白で細く長い指がそれを拭いさった。
「______なんで、お前が泣くんだよ……」
いつもの彼と、口調が違う……______。
それは彼と親しいものになら、簡単に分かるだろう。
でも今の修哉の脳は、それをなんなく受け止められるほど冷静ではなかった。
「口調……なんで、違う……の……?」
所々に嗚咽を交えながらも、なんとかその言葉を紡ぐ。
葵は困ったような笑みを浮かべて、頬を撫でてくれた。
「ごめん______泣かないで?」
普段感情的にならないから、どうやって涙を隠せばいいのか分からない。
顔を上げれば視界いっぱいに葵の甘い笑顔が飛びこんできて……______
目の奥が熱くなって、更に多くの涙が溢れてくる。
「葵……は、悲し……く、ない……の……?」
本来ここは葵が泣くべきところではないのだろうか。
母親の命日に、どうして関係のない俺が泣くんだよ……______
そう心の中で呟くのに、他に何か伝えたいことがあるのに、上手く言葉に出来ない。
「修哉が泣くと……悲しいよ」
葵の瞳が、寂しさに揺れる。
違う、そんな顔をさせたいんじゃない。
そう言いたいのに、心の痛みが胸につっかえて、上手く声を出すことができない。
いつものように笑っていてほしいだけなのに……、自分の口下手さが嫌になる。
「なっ、んで……っ」
今まで涙が伝う頬を撫でていた指が、今度は肩につくまでに伸びた黒い髪を優しく梳いた。
そのくすぐったさに、修哉は思わず身震いをする。
「修哉の黒髪ね、俺の母親にそっくりなんだよ」
唐突に紡がれた言葉。
二人の視線が絡み合うと、葵は薄く微笑んだ。
「だからね。俺、修哉のこと______
好きだよ」
頭と背に腕がまわされ、自然と葵の胸に顔を埋める形になった。
「これからもずっと、傍にいてね……」
朦朧とした意識のせいで、頷くことは出来なかった。
でも俺が傍にいることで彼が安らげるなら……永遠に癒えることのない傷を、少しでも和らげてあげられるなら____________
『傍にいたい』
強く、そう願える。
◇
大好きな母さんへ
あなたが逝ってしまってからも、
俺の心の中には、かならず笑っている母さんがいた。
これからもずっと、母さんを大切にしようと思ってた。
でも、母さんを大切にすることに使おうと思っていたこれからの時間を、
今、俺の腕の中で、俺の為に泣いてくれている彼を想うことに使ってもいいですか?
心の中で、何度も夢に見た大好きな笑顔に問いかける。
母さんがもしいたのなら、きっと笑って、「自分の想いを大切にしなさい」と云う気がした。
授業終了5分前______二人の時間はまだ、止まったまま。