BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 初恋は君だった 【BL】 ( No.97 )
- 日時: 2011/04/09 20:24
- 名前: 雲雀 (ID: aU3st90g)
- プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=Uw2Py8hFvv4
今から8年前______小学2年生の夏休み。
家族で祖父母の家へ遊びに行った時、山道で栗鼠を見かけて、追いかけて……気付いたら迷子になってた。
心細くなって父さんと母さんを呼んだけど、返ってくる言葉はなく、自分の声だけが不気味に森の中を反響しただけだった。
泣くのを必死で堪えながら歩いていたら、山小屋があった。
その頃の俺は体力がなくて、歩き疲れてたから、その小屋に入った。
夏だというのに小屋の中は妙にひんやりとしていて、独りでいるのが怖かった。
堪えていた涙が目から零れてきて、必死で指で拭った。
____________寂しい……。
いつも独りでいる事に慣れていたはずなのに。
この寂しさは、虚しさは、悲しさはなんなんだろう。
世界で自分がたった独りになってしまったような____________
そう考えると、また涙が溢れてくる。
手を伸ばしても掴むものはなく、苦しいほどの空虚さだけが、自分を満たしていく。
「……っ……!!」
涙で視界が霞んで、なにもかもが淡く溶け合っていく。
そんな中で、いっきに疲労が襲ってきて______意識が途切れた。
◇
優しい夢をみた。
数年前に事故で亡くした、兄の夢だった。
______お兄ちゃん。
掠れた声で、そう呼んでみる。
兄は微かに笑いながら、頭を撫でてくれた。
______おにぃ……ちゃん……。
大好きだったのに、一度もそう伝えることが出来なかった。
死ぬと分かっていたなら、もっと素直になれたのに。
何も伝えられないまま、兄は逝ってしまった。
兄の顔にかかっていた白い布をどかして、顔を覗き込んでみたことがある。
まるで、眠っているように安らかな顔だった。
『お兄ちゃん』
ついそう呼んでしまったことを、今でも覚えている。
呼べばいつだって、兄は笑ってくれたから。
でも硬く閉ざされた瞼は開かず、笑いかけてくれることもなかった。
いつも傍にいたのに。
傍にいることが当たり前で______その存在にいつも甘えてた。
いつだって、俺のことを大切にしていてくれていたのに。
いつだって、愛してくれていたのに。
何もしてあげられなかった。
そんなことを、今更悔やんでいる。
______唯。
そう呼んで、髪に触れて、兄は静かに微笑んでくれた。
もう2度と直接会うことの出来ない、大好きな人____________
そんな人の夢をみた。
◇
「______どうして泣いてるの?」
そう呼ばれて、体に意識が戻ってくる。
重たい瞼をもち上げれば、視界いっぱいに綺麗な銀色の髪がうつりこんでくる。
「どうして泣いてるの?」
涙の筋が残る頬に触れて、少し悲しそうにそう訊ねてくる。
「……っ……泣いてない……」
そう言って強がっても、少年は見透かしてるように微笑む。
「嘘……涙の筋、残ってる……」
「……っ……」
そんな優しさが、自分には余程辛い。
人の関わるのが苦手で、ずっと独りでいて……なんて応えればいいのか、全く分からないから。
「家族と逸れたの……?」
コクリと頷くと、少年が自分の手を引く。
「場所どこ?送ってあげる」
「え……?」
「この辺の事は、詳しいから」
そう言って、穏やかに微笑んでくれた。
さっきまでの悲しみはもう心にはなく、自然と口元に笑みが浮かんだ。
「君は……笑った顔のほうが似合うよ」
遠い昔に出会った少年の笑顔は、自分が大好きで、何度も逢いたいと願った笑顔によく似ていた。
それが______俺の初恋。