BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: ヘタリアでBL小説。 ( No.1 )
日時: 2011/08/26 13:34
名前: 夜藍 (ID: 1QpV5ZBE)

episode1 「身代わり」

・イヴァ耀です。そしてシリアスです。暗いです。何か、一夜を過ごした事前提でお願いします。名前表記です。


________________雨だ。

そう思い耀は目を覚ました。

寝転がっているベットからは窓が見える。その窓から見えるのは、どんよりとした雲。灰色のぶ厚い雲が空を覆っていた。

時計の針は午前九時を指している。いつもより遅く起きてしまったな、というか寝過ぎだろう、と耀は少し苦笑した。
いつもなら朝の五時とか、四時とかに起きれるのに今日はどうしたことかと理由を探した。



理由は、瞬時に見つかった。



「ああ、昨日…。」

耀は呟き、自分の服を見た。理由などそれを見れば一目瞭然だ。

自分の着ている服ははだけており、ボタンを留めてくれようと努力してくれたのだろうが、掛け違えている所がまばらにある。

はだけている服から見えている白い肌を隠し、首筋に触れる。
首筋には少し赤く痕跡が残っていた。

「にしても、当の本人がいねえあるな…。」
耀はベットから立ち上がりぐるりと辺りを見渡すが、一緒にいたアイツがいない。

「全く我を放ってどこに…」
と、耀が振り返った瞬間だった。




「耀くん。」
「ふわえっっっ!?」



振り返った瞬間、そこにはイヴァンがニコニコしながら立っていた。


いつの間に、と突っ込もうとしたところでいきなり抱きしめられる。


「な、何す…」「別にいいじゃない?昨日は拒否しなかったじゃん。」
「は!?そそそ、それとこれは別あるよ!!」
顔を真っ赤に出して耀は反論するが、イヴァンはニコニコ笑ったまま離さない。
そしてそのまま壁に追い込まれる。

「あ…っっ……!」
耀の声に反応するようにイヴァンは顔を近づける。

近く、近くに。








と、そこで耀の目に窓の外の景色が映る。





道路を仲良さそうな二人が傘を差しながら楽しそうに笑顔で歩いてゆく。



ちらりと見える金色の髪と黒い髪。



ああ、あれは…。
あれは…



「耀くん…?」
耀の手に力が無くなったのに気づき、イヴァンは少し体を遠ざける。

耀の顔を覗き込み、顔を近づけたりしても耀の表情は変わらない。


ただ、虚ろな目をして、静かに窓の外を眺めている。


イヴァンも少しの沈黙の後、何が起こっているのか把握出来た。

「イヴァン……。」
先に沈黙を破ったのは、耀の方だった。
「イヴァン、お前は我の事をどう思ってるあるか?」

イヴァンは少し顔を歪めた。
何が言いたいのだろうか。全く分からない。



耀は息を少し吸い、そして吐く動作をする。


そして口が開かれ、言葉が発せられるのはほんの数秒のことだったのに、イヴァンにとってそれは何故だか少しだけ長く感じた。






「我は、お前の“玩具”じゃねえあるよ。」




イヴァンは少し目を見開くが、またすぐに表情を戻し。

「どういうこと?」
「知ってるあるよ。我は身代わりでしかねえって事くらい。」

耀は薄い笑みをこぼす。

「お前が好きな人は、お前を好きじゃない。他の奴を好いている…合ってるあるか?」
「合ってるよ。大当たりさ…。」
イヴァンは耀から目をそむけ、自嘲的な笑みを浮かべる。
けれど視線を耀に再び戻し、いつもとは違う鋭くきつい視線で耀を見た。




「でも、君もそうでしょ?僕だって君の“玩具”じゃないんだよ耀くん。」




耀は目を見開いた。

「君は僕と同じで、好きな人はこちらを見てくれない。だから、僕も結局は身代わりでしかないって事だね。…とことん僕たちって孤独だよね。」

イヴァンの言葉を聞きながら、耀はうつらうつら思っていた。

愛しても、届かないだなんて分かっている事だった。
でも、届かないという事実を飲み込もうとは思えずじまいで。しかしいい加減自分でもあきらめはついたつもりだった。

_________しかし、このザマだ。

あいつらが通った時、発狂してしまうのではないかと思った。
何故、それをとどめることが出来たのか。
それは、きっと…

と、そこでイヴァンに耀はふわりと抱き上げられた。
そのまま、ベットに沈み込む。

イヴァンは耀に優しく笑いかけ、髪を撫でる。
耀もまた少し笑った。

「次起きた時はきっと、君を愛せてると良いな。」
イヴァンの笑顔。
「我も…そう思うある。」

きっとあの発狂しそうな思いをとどめられたのはイヴァンに抱きしめられていたおかげだろう。
そう。次起きた時にはきっと。

そう思い、耀は静かに目を閉じた。