BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【企画】ヘタリアでBL小説。【実施中】 ( No.140 )
日時: 2012/06/10 13:09
名前: 夜藍 (ID: eVWzcu6j)

episode32
「移り変わり」
日本さんと中国さんのちょっと切なめなお話。人名表記です。捏造多め


私の“兄”ではなくともそんな存在だったあの人が、
まるで他人の様になってしまったのはいつからだろう。

菊はふとそんな事を考えた。

今日はその人の家を訪問しているのだが…

「菊、どうしたあるか?」
その人_________王耀はにっこりとほほ笑みながら近づいてくる。
手にはお盆を持っていて、その上にはお月見の団子とお茶が乗っていた。
月見の団子なんてそこら辺のスーパーで売っているであろう代物を、見たところ形や大きさにばらつきがある。
きっと、わざわざ手作りしてくれたのだろう。


お盆を床に置いて耀は座り込む。「どっこいしょ」なんて老人くさい事を言うから菊は少し吹き出してしまった。
そんな菊の様子に口を尖らせながらも縁側の外に足を放り出す耀。

そう、あの日も、昔もこんな風に…

「昔も、こんな風に月を見ましたね。」
「そうあるね。その時はこんなにお前は小っちゃかったあるよー。」
懐かしむように目を細めながら言う耀に、あれから自分もずいぶん変わったものだな…と菊は思った。

「まだあれをうさぎが薬を混ぜていると仰るのですか?」
「そうあるよ。あれのどこが餅ついてるあるか。」
「強情な人ですね、昔と変わらず耀さんったら。」

“耀さん”という他人行儀な呼び方に耀は少し悲しげな表情を浮かべる。

昔と今とでは違う事がこんなにも辛いのかと。

「ねえ耀さん、私たちはこれからどこへ行くのでしょうね。」
「…何を馬鹿な事いってるあるか。普通に生きてどっかで滅んだり、そうじゃなかったり…考えるのも面倒ある。」
四千年生きてきた耀にとってそれはもう考えなくてもよいものになっていた。

けれど_______________


菊が、耀の手の上に、自分の手を重ねた。
熱を帯びたその手に少し耀は首を傾げる。
一方の菊は熱が伝わるのが怖くて。






変わっていくのは、変わってしまうのは、怖い。





だから、今は、このままでいましょう。