BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【二次創作】箱庭の中で【BL、NL】 ( No.179 )
- 日時: 2012/07/24 16:11
- 名前: 夜藍 (ID: eVWzcu6j)
episode40
「逃走にロマンティックなんてありません。」
・シズ←イザです。題名と内容は一切関係ないです!そして少女マンガ。
「臨也ァァァ!!!!」
大声をあげながら猛スピードで何かを追いかける金髪バーテン服の男。
そしてその男から逃れる“何か”はもちろん人で夏用の、それでも暑苦しい長袖のコートを着てへらへらと笑いながらモデル顔負けの長い手足を動かしている。
「待てこの野郎ぉぉぉぉ!!!」
「待てって言って待つ奴なんていないよー!常識でしょー。」
金髪バーテン服の男の大声にバカにした様な声音で返事をする。
これが、日常風景である。
追いかけているバーテン服の男は平和島静雄。
そして追いかけられているのは折原臨也。
ここら辺では有名な名前だ。そして二人の仲も同じように有名だった。
水と油、犬と猿、あるいは万事屋の糖分旦那と真選組のマヨ副長のように。
これほどにないくらいに互いの事を嫌っている、と。
「このっ!ノミ蟲がああああああ!!!」
静雄が叫ぶのと同時に自動販売機が臨也めがけて飛んでくる。
これも奇妙ではあるが日常風景だ。
初めて目にする人がいればCGかと疑うような光景だが現実である。
だがその飛んでくる自動販売機を臨也はひょい、と避ける。
「シズちゃんの行動はワンパターンすぎ。分かりやすいね、単細胞!」
べーっと赤い舌を出しケラケラと笑う臨也の言葉は静雄のこめかみに青筋を浮かべる。
そんな様子に目もくれず、臨也は近くの路地に逃げ込む。
路地は行き止まりだ。
普通なら人間、そこで諦めて殴られるが臨也は違う。
軽快なステップでひょいっと塀の上にのぼる。
臨也の身軽さは折り紙つきだ。高校時代からこの男との追いかけっこをしているのだから。
なので、いつも通り、いけると思ったのだが…
運悪く足を滑らせる。
(やば…っ…体勢変えなきゃ…)
臨也が思い、地に足が着くか着かないかの地点で静雄の方を向く。
すると静雄はこちらに走ってきており、いきなり止まっている臨也に気づき目を見開きながらも止まる事が出来ず。
どん、と大きな音をたててぶつかる。
「っ…!!」
と、同時に臨也は真っ赤な顔をして静雄を睨みつける。
「何だよ。」
「今っ!当たった!」
少し涙目の臨也に静雄は「はぁ?」と首を傾げる。
「何がだ、何が当たった。」
「これが!!これと当たったの!」
自分の口と静雄の口を交互に指差す臨也に静雄は気づく。
気付いたのと同時に臨也は涙目のまま塀を登って逃走を図っていた。
「あ…てめえ…っ!」
「シズちゃんのバーカ!いっぺん死んでこい!」
子供の様な臨也の言葉と一緒に彼の姿は塀の向こうに消えた。
* * *
という事が先日あり、臨也はもやもやした気持ちの中池袋を歩いていた。
(気にしてなんかない。別に、別に。)
そう言い聞かせて静雄に会いませんように、と願う。
だが、つくづく運が悪い様で。
数メートル先に、彼は居た。
臨也の方を見ているものの、追いかけては来ない。
最初は何故?と首を傾げたが、こちらをずっと見てそれでも動かない静雄に臨也はしびれを切らしてすたすたと歩き出した。
向かう先は、前、前、前。
「シズちゃん。」
「げ、お前か。」
「なにそれ。こっち見てたくせに。いつもみたいに追いかけてよ…調子狂うじゃん。」
少し俯いて臨也は息を漏らす。
「お前だって昨日の事気にしてんじゃねえのか。」
「そ、れは…別に…。気にしてなんかないもん。」
ふん、とそっぽを向く臨也に静雄は溜息を吐いた。
溜息を吐きながら、臨也を担ぎ上げる。
「ななな!!何すんの!?」
「暴れるな、落とすぞ。________気にしてるって事は、俺を好いてるって事で良いんだな。」
静雄は最後の方の言葉を臨也の耳元で囁く。
すると臨也の方は真っ赤になって反論した。
「はあ!?なにそれ自意識過剰すぎ!シズちゃんなんか嫌い嫌い嫌い大っ嫌い!!」
「そういう顔してたら逆効果だっての。」
「…っ!!もう…シズちゃん本当に嫌い…。」
臨也は諦めたようにぐったりとうなだれる。
運ばれる途中、静雄の耳元で臨也は先ほど彼がしたように囁いた。
「でも、好き。」
「んだよ、それ。」