BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【二次創作】くるくるめりーごーらんど【BL、NL】 ( No.283 )
日時: 2013/02/25 14:23
名前: 夜藍 (ID: vIJhruab)
プロフ: バレンタインデー 緑高 黄赤 緑高はモブ子目線です注意

episode74





「しーんちゃんっ!!」
うぇーい、と訳の分からない奇声を発して緑間真太郎と言う変人に駆け寄ってくる高尾和成という人物は至ってその日いつも通りだった。

と、いうよりも。

(あー真ちゃんからのチョコまだか的な発言はまだかなー)

平然を装っていただけである。
きっとあの表情といいなんといい多分きっかけがないとチョコを渡せないんだろう。
いつも何かきっかけを作るくせにこういう時には作れないのか高尾。
でもそこが可愛いよただのハイスペックじゃないよ!

そんな事を思いながら教室の廊下側の席で彼らをじっと見つめているのはただのモブの私である。
ちなみに女だし名前はまだない。みかちゃんなりゆかちゃんなり勝手に画面の前にいるあなたが名前を付けちゃっても構わない。
でも私は自分の名前がどうなるかよりずっとずっと大事なことがあるのだ。

目の前にいるカップルが平和にチョコを渡せるかどうか…!!

ちなみにお分かりでいただけてるであろうか、ホモである。
だがそれすらも感じさせない爽やかさを持っていてですねとか語り出したらキリがないのでやめる。
とりあえずかわいいカップルだ。

そしてそんなカップルがいちゃいちゃしないわけがない日が今日…バレンタインデーなのである。
そりゃあ平和にチョコなりなんなり渡せたらいい。だがここは教室だ。緑間くんの方から話を切り出さないと高尾も緊張しまくってチョコを渡せないんだろう。
さきほど高尾の右手にチョコを確認したのでもう渡すか渡さないかという状況が今なのだ。

さあ緑間くん…言えよ、「今日はバレンタインデーだな」って言えよ!

と恐ろしいほどの念を送っていると。

「…あーっ!もう真ちゃんったら!!ほんっとバカ!マジありえねーよこのバカ!」
「バ、バカバカ言うな!お前にだけは言われたくないのだよっ!」
「はぁ!?お前にも言われたくねぇわ!今日何の日か知ってんのかよ!」

え、ちょ、言い争いかよ!?
あまりにも突然すぎる出来事にクラス中もピタリ、と時が止まったかのように二人以外は動かなくなった。
そりゃあ高尾も堪忍袋の緒が切れるわ、とは思うけども、思うけども!
だめでしょ、こんな日に喧嘩とか!バレンタインデーは血の戦争って言う子もいるけどこういう意味じゃないでしょ!

どうするのこの状況、どうすんのよ!

「お前一体何を言って…」
「今日の日付、見てみろよ…。」

高尾に言われて首を傾げた後、くるんと体を捻らせ、黒板を見る。
そして高尾の方に向き直り悲しいけれどこれ以上にない最大級の笑顔で言った。

「あたしって、ほんとバカ…」


緑間くんそれ、死亡フラグや…





その後ちゃんと高尾と和解し、緑間くんにチョコを渡すところまで見届けたので私は満足と言えよう。
ちなみに手作りは手作りだったらしいが妹ちゃんに作ってもらったものらしい。
それを聞いて一瞬緑間くんはあぼんしてたけどすぐに笑顔になって「ありがとう」と言っていたので大丈夫だろう。


今日もチャリヤは平和です。




* * *




ピンポン、とありきたりなインターホンの音を聞くのは今日で軽く三十回目。
また熱烈なファンが自宅を訪問してきたのかと俺は溜息を吐いてドアを開ける。
営業スマイルならとっくに準備できてるっスよー、とにっこり笑って前を向くと。

「りょーぉーたーぁー」

そこにいたのはファンの女の子ではなく愛おしい、愛おしい人だった。
「あ、赤司っちぃ!?え、え、京都じゃなかったんスか?」
「…来てしまった。これ、渡しに。」
ん、と赤司っちが差し出すのは小さな包み。透明で中のものがチョコレートだという事は一目瞭然だ。
え、京都にいるはずの彼が、俺にチョコレート渡しにだけに、え?

何それ、何それ、そんなのって、そんなのって、

「めっちゃ嬉しいんだけど…」
「…!!本当か?」
ぱぁっと目を輝かせて赤司っちが俺を見る。嬉しくないわけないじゃん。本当か、なんて聞かなくったって。
「本当っス。」
営業スマイルなんかじゃない、最大級の笑顔を彼に送ると彼も少し恥ずかしそうに俯きながらも小さく笑った。

ああ、バレンタインデーなんて迷惑な行事と思っていたけれど、まだまだ捨てたもんじゃねーなー!


ちなみに赤司っちのチョコレートはえらくまずかった。
うん、これ地球上の産物?と聞きたくなるくらいまずかった。
でも、でも、嬉しいからいいんだ。泣いてるのはまずいからじゃない、嬉しいからだ…うぷっ…
「どうした涼太…まずいか…?」
「そそそ、そんな事ないっスよー!めちゃくちゃ美味しいっス!」
この天使さんに言えるわけないじゃないか。

クソまずいチョコレートを食べきった俺は目を閉じ静かに笑った。

(もう何も怖くない…)




○はっぴーばれんたいん!

_________それぞれのバレンタインデーは

_________案外楽しいものでした