BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【二次創作】深海魚の笑い声【BL、GL、NL】 ( No.351 )
日時: 2014/02/09 23:25
名前: 夜藍 (ID: tDifp7KY)
プロフ: 木日←月 知らない方が幸せな話

episode102



押し殺した、全て。




「どうしたんだよ、ボーッとして。」
不意に声をかけられ、やっと我に返る。
部室は窓からオレンジ色の光が差し込み、もう夕方になってしまったのだなということが分かる。
西日が眩しい。目を細めたまま光を背にして立つ彼を見つめた。
「…んだよ。」
不機嫌なような、そうでないような、低い声。
俺はその声を聞いてすぐ口元を綻ばせ、「なんでもない、」と答えた。


部誌を提出し、日向と並んで校門から出るとそこには木吉がいた。
この寒い冬の空の下、きっと待っていたのだろう。
「お前な…」
「別に待ってくれなくてもいいつってるのに、」だなんて日向は憎まれ口をたたくけれど、そんなの木吉に通じるわけにもなく、「待ってるのは当たり前だろ?」と返されて何も言えないようだった。
そんな二人の様子を見て俺は笑いながら日向と木吉に手を振る。
「日向、俺寄り道するからさ、別の方向から帰る。」
元々日向と俺の家の方向は同じで、帰り道もほぼ同じなのだが、それを聞き日向は「…そうか。」とだけ答えた。

「じゃあ、」と背を向けて歩き出して、一歩一歩と彼らから離れていく。
三歩目で振り向いてみると、彼らも歩き出していた。
二人で並んで、何を喋っているのだろう?分からないけれど日向は笑っていた。ただただ、笑っていた。

ああ、なんて眩しいのだろう。今日見た光景のように、日向は光を背にして歩いているようだった。
俺にとって日向は眩しくて、なのに不器用で、遠くではなく、もっと近くにある存在だった。
けど、今は違う。近くにいても、近くに存在しても、特別な感情を持って日向の隣に立つのは俺じゃない。
きっとあんな風に笑うのはその人の隣だからだろう。俺には届くはずもない、特等席。

楽しそうに笑いあう二人を見送った後、俺は再度振り返り、歩き出す。
ありもしない寄り道の場所へと、歩き出す。



○無知

________そんな風に笑っているあなたが

________俺の気持ちを知ればどんな顔をするのだろう




何も知らずに笑うあなたはとても素敵で、きっと俺の思いなど知ることもない。