ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

episode105



目の前には糸電話が転がっていた。

真っ白な紙コップから対になるかのような真っ赤な色の糸がのびている。
その糸はずっと先に続いていて、地平線の先まで続いていて、こんなに長い糸ならばきっとあの人にも届くんじゃないだろうかとコップを手に取って口に近づける。

「もしもし」

くぐもった声がコップの中で反芻した。そうしてから耳にコップを当ててみる。
返事はない。当たり前だ、聞こえるはずないのだ。だってこのコップからのびている糸はたゆんでいるのだから。
そうでないにしてもあの人から電話がかかってくるときはいつだってあの人から電話をかけてきた。僕から話しかけたとしたって応答してもらえるかどうかだなんて結果は解りきっている。

でも、それでも僕は希望を持ってしまうのだ。
この声があの人に届くのではないのかと、もう一度あの人の声を聞けるのではないかと。



○糸電話

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿貴方の声が聞きたくて

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿このコップを握りしめているの




「もう一度、その声で、指令を出してください、ボス。」


ずっと待ち続けているから、だからいつかまた、