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episode111












始まりが些細なことだったから、酔った勢いの深瀬に押し倒されて、流れるままに抱かれただけだったから。

(だから信じられなかったんだよ)

責任を取る、だなんてなんて重いものを彼に背負わせてしまったのだろう、突き放せばよかった。まだ若いのに、未来とか希望とかたくさんあったろうに
深瀬がアタシを抱いた3ヶ月後必死に働いて貯めたお金で結婚指輪を持ってきた、あの時、あの瞬間、少し泣いてしまったけれど、喜ぶべきところではなかったのだと今になって痛感するのだ。
寧ろ彼に罪を背負わせた、そして背負わせた罪をアタシ自身も背負ったのであろう、そんな風に思う。

だからこんなくだらない、くだらないことでこんな、もやもやとしてしまって、

(アタシのことなんて別に本気で好きじゃないでしょう)
(いいんだよ、出ていってくれても)
少し構ってもらえなかったからって、なんて情けない、なんて大人げのない
彼の複雑そうな顔も、何もかもが脳裏に焼き付いて仕方ない
(氷漬けにできるなら、何も聞かないで済むのに)

そんなことを願ったアタシがそんな話を書くのはもっとずっと先のことになるのだけれど。








○凍てつけ心

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿何も聞かないでいられたら

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿きっとそれは逃避でしかなくて。








「あんときのお前ほんと子供みたいだったよなー」
「うるさいわね、若気の至りよ。」