BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【リク受付中】さあ廻れ、アルカロイド【BL、NL、GL】 ( No.385 )
- 日時: 2015/03/03 03:03
- 名前: 夜藍 (ID: D6FduTwT)
- プロフ: 嫌いな人の話 へし宗 ギスギス
episode115
憎悪や悪意というのはどこまでも真っ直ぐだ。
嫌だ嫌だと言いながらもその方向しか見れず、目に付き、噛み付く。もしかしたら好意よりもずっと真っ直ぐなのかもしれない。
その中にあるものが、理由が、ただただ醜く歪んでいようとも悪意そのものはどこまでも真っ直ぐなのだ。だからこそそんな悪意を自分に向ける貴方が愛おしくてたまらないし、貴方に悪意を向ける自分が愛おしくてたまらないのだ。
「おい」
呼びかけられ、伏せていた瞼を持ち上げる。
春の日差しに照らされた畑にその姿は逆光に映り、最初は誰だか判らなかったものの少し考えればその不機嫌な声から相手はへし切長谷部であるのだろうということはなんとなく想像がついた。
掌に塗れた土を払い、しゃがんでいた体勢から立ち上がる。
同じくらいの目線になったところでようやくその相手がへし切だと確証が持てた。のと同時に「どうかしましたか、」と先程の呼びかけに返事をした。
「あっちの雑草は全て抜き終わった。こちらを手伝う。」
彼の視線の方に目をやるとこれまで畑当番に当たってきた刀剣達の怠惰の印とも言える青々と茂っていたあれほどまでにあった草が綺麗さっぱりとなくなっている。
主命とあらば、と彼はよく言う所を耳にするがまさかここまでの働きっぷりとは。
かく言う自分は担当範囲の半分もまだ終えておらず苦笑する他なかった。
「早いんですね。」
彼が背負っている籠に溜りに溜まった雑草を見ながら言うと溜息を吐かれる。
「お前が遅いんだ…服が汚れることくらい気にしている場合か。」
「まあ僕はへし切とは違いますから。」
口元を手で覆って笑いながら言うとへし切のこめかみの辺りが引き攣るのが解った。
「…わざとか」
「何がですか?」
しゃがみ込み、作業を再開させようとしたところに恐ろしく低い声が降りかかるものだから条件反射で首を傾げてしまう。それが相手を更に苛立たせることなどとうの昔に理解していたがそれをしてしまうのはやはり相手が彼だからであろう。
予想通り彼は苛立ちを覚えたようで小さく舌打ちをした後続きの言葉を紡いだ。
「へし切と呼ぶな、長谷部と呼べと言った筈だが。」
「それを頼んだのは主に、でしょう?僕は関係ない。」
雑草を摘み取る手はお互い休めることなく会話は続いていく。
「お前は俺がこの名前を嫌っていることも理由も知っているだろう。」
「嫌っておられるのですか?てっきり気に入っているものだと。」
「馬鹿を言え。」
自分と同じように隣にしゃがみこんだ彼がこちらを睨めつける。
その様子に僕は小さく笑い、「貴方はあの方に執着しておられるではないですか。」と返した。
「どこが、」
「貴方の言う事の節々にあの方を感じるものですから、嫌よ嫌よと言いながらも執着しているように見えて。」
「妄言を…」
「あの方に執着している貴方は羨ましいのでしょう?下げ渡された貴方は、この刻印も、愛された僕も全部。」
ぶちり、根元まで引っこ抜くことができずに雑草がちぎれた音と共に彼の何かもちぎれてしまったように思えた。
彼の手から草の断片が落ちるとこちらに向き直り、再度僕を鋭く睨めつけた。
「煽ることしか能がないのか貴様は。」
「煽るだなんて、ふと思ったことを言ってみただけですよ____それに怒ってらっしゃるということは先程の僕の言葉を肯定しているということでよろしいですか?」
「勝手に思っておくがいい。」
苛立ちを滲ませながらも作業を続けるこの男は本当に真面目だなと感心する。というより呆れるという方が正しいだろう。早くこの場から立ち去りたいだろうに…まあそうさせたのは自分なのだけれど。
へし切もへし切とて言い返すことは出来たであろう。けれどそれをしないのはそのせいで主に迷惑をかけることになるかもしれないというやはり主に対する忠義忠誠からくるものであった。
(馬鹿な男だ)
そう思うのはへし切もそうだろう。あの方に仕えていた時には見ることの叶わなかった高い空を仰ぎながら自分と彼を嗤った。
○恨みのこもった視線
___________その視線が愛しいから
___________いつまでもこのままで
もっと憎めばいい、もっと嫌悪するといい、そんな貴方を僕が嘲笑ってあげよう。そうしたら貴方は刀それ自体と同じように鋭く光る視線を今以上に寄越してくれるだろうか。