BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【リク受付中】さあ廻れ、アルカロイド【BL、NL、GL】 ( No.394 )
日時: 2016/01/02 11:15
名前: 夜藍 (ID: CxgKVnkv)
プロフ: 一カラ 生きるのも死ぬのも面倒な話 暗い

episode121




「お前、死ぬの?」
開かれた襖、振り返ると投げかけられたのはその一言だった。
先に言うと俺は重篤な病を患っているわけでもなければ、手元にあった眼前にいるクソ野郎の大切にしている革に髑髏の装飾が施されたナンセンスなベルトを首にかけているわけでもない。
だとしたら何故、俺にそんなことを問うのか。

答えは俺が生きていくための必要最低限の努力をしようとしないからだ。

元々食は細い方だったがここ最近白米をほんの一口食べるだけで満足してしまうし、元々外出なんて滅多にしないので太陽の光など二週間ほど見ていない。まず外の空気を吸っていない。閉め切った部屋でただじっと時間が経つのを待っている日々が続いていた。
だからわざわざ心配した素振りで、まるで俺が今にも死ぬかのようにクソ兄貴は切羽詰った掠れた声で問うてきたのだろう。『お前、死ぬの?』と。
至極シンプルかつ大袈裟なのがクソ松らしい。いつもなら意味の無い言葉の羅列をつらつらと並べていくのに本当に焦った時はどこまでも直球に言葉を投げかける。ばかだなあ、なんでこんな、ゴミみたいなやつのことを本気で心配できるんだよ、お前は。だから、だから俺は、

「おい、一松」
「別に死にたいわけじゃない」
返答がないことにまた焦り出したカラ松は俺に再度語りかける、とそれを遮るように俺が返答になっていないような回答をすると相手は目を見開いた。
相手の唇が動こうとしているのも気にせず、俺は続ける。
「でももしこのまま死ぬなら死ねばいい」

どちらも本音だった。死にたいわけではない。死にたいと思ったことはある。俺はおそ松兄さんの様な引率力はないし、クソ松や十四松の様に物事をプラスに捉えられる神経は働かない。ましてやチョロ松兄さんやトド松の様にまともな人間になる努力をしようだなんて出来た試しがないのだ。
そんな自分が社会の、この世界のゴミクズのクズの最底辺の人間なのだと自覚した時、何度も何度も死にたくなった。けれど、その感情すら今はない。今も死ねないまま生きている。
死のうとする努力をすることさえ俺にとっては億劫だったのだ。
だから別に死にたいわけではない。だが、もしこのまま、緩やかに緩やかに努力をしないまま死んでいけるのだとしたらもうこのまま死んでもいいと思っていた。

「人間、いつかは死ぬ。それが遅いか早いか、それだけの話だろ」
俺がそう言うとカラ松は膝を折ってその場にしゃがみこんだ。そして体を震わせながら、しゃくりあげながら、俺の肩口に縋りつく。
「お前が…!!」
言葉を切って呼吸を整える音が耳元で聞こえる。うるせえなあ、昔から、いつもこうやって泣く。
「お前が死んだら俺はどうすればいいんだよ」
「今まで通り生きていけばいいだろ」
「出来るわけないだろ、そんな、こと」
しゃくりあげる声がどんどん悲痛になっていく。
「頼むから、死ぬなんて言わないでくれ、頼むから、生きていてくれよ、なあ、」
涙の海が肩口にじわじわと広がっていく。なんでこいつはこんなに馬鹿なのだろう。

なあ、なんであんたはそんなに俺に生きていてほしいんだよ、なんであんたはいつもそうやって俺に縋ってくるんだよ。そうして俺があんたに何かあげれたものがあったのか?俺が生きていることが、あんたの生きていく理由になるのか?違うだろ、あんたは誰にだって優しくて傷つきやすくてどうしようもなくバカだから勘違いしてるだけなんだよ。だからそんなあんたが俺は嫌いだ。何よりもキラキラしてて純粋で、疑うことを知らないあんたが嫌いだ。よりによってこんな体中に蛆虫が這いずり回っているような汚い人間を好きになってしまった、そんなあんたが嫌いなんだよ、クソ松。

言いたいことは山ほどあるが口を割って外に出てこないのは何もかもをぶちまけて肩口で泣きじゃくっているこいつを、手放すことはしたくないからだ。
なんて汚いのだろう、なんて醜いのだろう、最低だ。また自分が嫌になる。
そしてそんな汚い自分に縋っているこいつが嫌になる。そんなこいつに縋っている自分もまた、嫌になって、



「まだ死なないからいい加減にしろよ、汚ねえ」




○君に縋って息をする


(あんたがいる限り、俺は死ねないのだし、あんたも俺がいる限り死ねないんだろう。一緒に生まれたんだ、なあ、一緒に死のうって言ったら、あんたはどうするんだろうか)