BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【リク受付中】さあ廻れ、アルカロイド【BL、NL、GL】 ( No.401 )
- 日時: 2016/02/13 11:04
- 名前: 夜藍 (ID: DUUHNB8.)
- プロフ: 始まってしまうのは怖い話 おそチョロ
episode122
なあ、始まったならいつか終わりが来るんだよ。それなら始めなければいい。それだけの事だろう?
なのに、なんであんたはそういうこと言うかな。聞きたくて聞きたくなかった二文字を、口の端から零れ落ちていくのを見ているのは怖くて仕方なかったよ。
優しい顔してそういうこと、言うなよ。俺にいう言葉じゃないだろ、『好き』とか。
その次の『愛してる』も『ずっと一緒にいよう』も全部いつか終わりがくる言葉だ。約束は破られるものだ。それなのにあんたは小指を絡めて泣きじゃくる俺を宥めるように笑う。
(違う、違うよ、兄さん、俺が泣いてるのはさあ、そういう言葉がずっと聞けなくて辛くて切なくて仕方なかったわけじゃないよ、俺はただあんたの優しさが、終わることが始まってしまったことが苦しくて、それでもどこかその言葉を待っていた自分の我儘さがみっともなくて泣いてるんだよ。)
言えたらどんなに楽だろうか、と心の中で反芻しても言えないのは幻滅されるのが怖いから。
けたけたと笑うその赤色に抱きしめられているこの時間を手放したくないから。
(傲慢だ、)
神様、がいるのならきっと俺は許されないだろう。我儘で傲慢でどうしようもないこの人間を誰が許すことができようか。
自分でさえ許せないのだ、でもこの兄貴はあっさりと許してしまうかもしれない。だからまた甘えてしまう、許しを乞うてしまう。
善良な人間を演じて、演じきれなくて、腹の奥にしまった筈の感情が溢れだしそうになるのを堪えるのに精一杯で、こんな人生一ミリたりともこれからに期待できるわけないのに、それでも生きて、生きていこうと思うのは、辛うじて俺を離さないでいてくれる赤色がこの世にいるからで。
全部甘えだって、解ってるよそんなもん。でもさ、それでも生きてたいんだよ、終わるのが怖いって怯えながら、でもどこかに終わりが来ないことを期待しちゃって、神様がいるなら馬鹿みたいだって笑うようなことだって、解ってる、けど。
「こればっかりは、どうにもなんない…し…はは、」
「泣き止んで早々何笑ってんだよ」
眼前の人間の、怪訝な目。もう一つ笑うとぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。
「なに、いたい、」
「今まで言えなくてごめん」
ぐしゃぐしゃに滅茶苦茶に撫で回された頭より優しいその言葉の方が痛かった。
けれどそれを悟られまいと、俺は言葉を返す。
「俺もさ、兄さんのこと、好き」
泣きじゃくった後の絶え絶えの息で。
○終わりへ向かう恋をしよう
(永遠なんてどこにもないってあんたが一番知ってるくせに、残酷だよ)