BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: ヘタリアでBL小説。 ( No.66 )
日時: 2012/03/24 17:28
名前: 夜藍 (ID: xBHsg906)

episode16
「愛してるなんて言わせない」
・ちょっとトチ狂ったろっさまとぷーちゃんのお話。国名表記です。
冷戦とか壁とかのお話。

「君はそんなに向こう側に行きたい?」
ロシアがプロイセンに質問をなげかけた。
「…んなもんあったりまえだろうがよ。」
少しイラついた口調でプロイセンは言い放つ。
目の前で椅子に座っているロシアをギロリと睨みつけ「お前は一体何のつもりなんだ。」と逆に問い返した。

「何って?」
「お前とその、アメリカとかいうやつのごたごたにだ。俺たちを巻き込んで…一体何がしたい?嫌いな俺への怨みってやつか?」
その言葉にロシアは口元を緩ませて「誤解だよー」とのんきに笑う。
「そんな事言われても仕方ないかもしれないけどね。」
「…お前、ふざけてんのか?」

一瞬またロシアは笑った。だが瞬時に冷たい表情に切り替わる。
「この閉鎖された空間で、多くの人が嘆いて、悲しんでる。西側へ行こうとする人もいるけど、見つかったらそれは死を意味する。_______________________いままでずっと頑張ってきたんだ。誰かに好かれるように、好かれますようにって。」

ロシアは光を宿さない、紫の瞳を天井に向けながらただ少し笑みをこぼし繰り返した。だれも花の咲かないような冷たい所になんて来ない。人は日の光を求めて暖かい場所を求めるのだと。
「きっともうすぐあの壁だって壊される。この冷戦だって雪解けに向かってる。」
窓の外を見、そびえたつ長く、高い壁をロシアは指差した。
「その時は君、会えるんだよ?最愛の弟に。」
「____________________ヴェストに、か。会いてえなあ…」
「…会いたいんだね。やっぱり。」
「この壁を作った当事者が何でしょげた顔してる?泣きたいのはこっちだっての。」
溜息を吐きながらプロイセンは頭を抱えた。
そんなプロイセンにロシアは鋭い視線を向ける。

「でも君はもう国でもなんでもない。そんな中途半端な存在で弟をまだ守ろうだなんてバカなんだね、やっぱり。」
「…それは。」
「守れるわけないじゃない…そんな体で、弱りきって…最期の瞬間まで弟守って消える気?ばっかじゃない!?全部全部弟の為なんだから!!」
ロシアは小刻みに震えながら、プロイセンが聞いたこともないような大声ですべての言葉を吐き出す。
そんなロシアの様子にプロイセンは少し驚きながらもいつもより真剣な口調で言い放った。
「俺は約束したんだよ。絶対守るって…ずっとずっと守っていくって。俺はヴェストに嘘を吐いたことはない。今まで一度もな。」


それだけ聞いてロシアはプロイセンの部屋をあとにした。
部屋の前にはずっと待ってたのだろう。ベラルーシが立っていた。
「ベラルーシ…」
「兄さん、何かあったのですか?」
「…ごめん、帰ってくれるかな。」
小刻みに震え続けるロシアの様子に気づき、ベラルーシは「でも…」と言いかけた。けれどきっと一人にしてほしいのだろう。そう悟り、「分かりました。」と言い、ペコリとお辞儀をして去って行った。

_____________________________兄さんの泣き顔なんて初めて見た…


前髪ので隠れている瞳と頬が濡れているのがチラリと見えたのだ。
ベラルーシは溜息を吐き、振り向いた。
そしてはるか遠くのドアの向こうにいるプロイセンに向かって舌打ちをする。


「あの大馬鹿者め。」


小さな音を立てて、ロシアの部屋のドアは開いた。
あまり豪華ではないが、これが一番落ち着く空間なのだ。
ロシアがベットにもぐりこむ。

今までの事が、気持ちが、心が、走馬灯のように駆け巡ってゆく。

___________________ただ一緒に居たかった。その一心で。
でも君は最愛の弟の事ばかり考えてる。

どんなに近くに居ても

どんなに笑ってても

君はこちらを見ようとしない。

僕を見てくれない。

だから僕は君の“大嫌い”になった。
そうすれば、わざと嫌われるようなことをすれば、君は見てくれるようになるから。
僕の言葉に耳を傾けてくれる。
まるで子供だよね。
子供で、バカで、弱虫なのは
僕の方だよプロイセンくん…




満天の星空が輝く夜。


きっと一緒に見れたらいいなと思っていた景色、結局見れなかったな。


願ってもかなわない思いを胸に秘め、ロシアは深い眠りについた。


1989年11月10日。ベルリンの壁は崩壊し、翌年の1990年10月3日に東西ドイツが統一された。


さよならも言わないなんて、彼は本当に僕の事嫌いなんだな。
ロシアは呟き、くすっと笑った。

遠い未来でいい。


恋とか、愛とか、そんなんじゃなくてもいい。


ただまた出会って、


バカやって笑えるように


なってたら…いいよね。