BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: ヘタリアでBL小説。 ( No.95 )
- 日時: 2012/04/16 19:08
- 名前: 夜藍 (ID: xBHsg906)
episode22
「スコール」
・イヴァ耀です。22だからにーになんてそんなわけじゃあ…あります。← 暗めの話。
耀が住んでいるここは雨が特に多いというわけでもなかったはずなのに、とイヴァンは窓の外を眺めた。
大きな音を立てて流れ落ちる、屋根の水。
地面に叩きつけられる雨の音。
水道が止まってしまって困るある、と耀は迷惑そうな顔をして言う。
イヴァンはためしに自分が持っている水道管の蛇口をひねってみたが水は出なかった。
「そんなの水道管切り離して水通ってないんだから水が出なくて当たり前あるよ。鉄パイプ同然ある。」
「ええっ!そうなの?こういう時の為にと思ってルート君の家から引っこ抜いてきたのに…」
「ルートヴィヒの家から引っこ抜いてきたあるか…お疲れある。」
雑音でしかない雨の音が二人の会話を邪魔する。
聞こえないという様子で首を傾げてみたり、耳に手を当てるジェスチャーをしてみることが多くなっていった。
と、いうのも時間が経つうちに雨足が強くなっているのだ。
そんな時にがらりと耀は窓を開けた。
そしてそこから外へ飛び降りる。
ここは一階。そこから外へ行くことは運動神経抜群の耀にとっては安易な事だ。
だがこんなどしゃ降りの雨の中、外に行くなどイヴァンや他の人には考えられないだろう。
イヴァンは窓から首を出し、「なにやってるの耀くん!」と叫んだ。
すると耀はニッコリと笑いながらこちらを向く。
その様子にイヴァンはドキリとした。
水が滴り落ちる黒髪はより黒が濃くなって美しい。
服もぴったりと肌に張り付いていて体のラインがくっきりと見える。
妖艶、という二文字が今の耀にはぴったりだ。
「耀くん、風邪ひくよ?」
「いいあるよ、すぐ直るね!」
耀はクスクスと笑いながらはしゃいでそこらじゅうを駆けまわったり、くるくると回って見せる。
まるで子供の様に。
「私は雨が好きある。心が曇ってどんよりしても泣いたらすっきり。雨は涙あるよ。」
窓辺で頬杖をついているイヴァンに耀は歩み寄る。
「空が泣いてるって言うの?」
「そうある。今はもう…すぐ傍には居ないけど、言ってた奴がいたある。」
遠い目をして耀が思い出すかのような顔つきでイヴァンの方を見る。
「それって耀くんの、“イトオシイヒト”?」
イヴァンは愛おしい人という言葉を言うのが苦手だ。
昔からそんな人が居たとしてもその人の最愛にはなれなかったから。
「昔の話ある。でも確かにあの時の愛おしい人はあいつだったあるね。」
耀は悲しげな、痛みを背負った瞳をしていた。
僕も同じだよ、という言葉をイヴァンは飲み込んだ。
必死になって。ここで言ったら壊れてしまうような気がして。
「お前にもいたあるか?過去の愛おしい人。」
「いたよ…全部、壊しちゃったんだけどね。」
わざと大嫌いになった人。
傷つけて痛めつけて縛り付けて、引き留めようとした人。
どちらも“大切”だった。“イトオシイヒト”だったのに。
壊してしまったから。
「そうあるか。」
「うん。…ねえ耀くん。」
「何あるか?」
「一緒に居ようね。」
「…うん。」
何度この会話を交わすのだろうか。
次は壊しちゃいけないから。大事にするから。
分かっていた。だから言わなきゃならない。
ありきたりだけれど…「ずっと一緒に居ようね」を繰り返した。
振るわけない筈のスコールが降った昼過ぎ。
夜には雨が上がって星が見えた。
泣けばいいんだと、空は言っている様だった。
泣けば、終わる。晴れるんだと…。
二人で星に名前を付けて行った。おかしな名前ばかり。
二人には星がいつもより綺麗に見えた。