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Re: 腹黒親衛隊隊長の受難《NEW》 ( No.348 )
日時: 2013/06/11 21:50
名前: 黒猫ミシェル (ID: JSwWcgga)

「これが明日からここに来る、私の大切な可愛い甥だよ」

「は?」

俺に写真を見せながら、満面の笑顔で理事長は俺に言った。
それはもう嫌なくらい笑顔で。
馬鹿野郎と罵らなかった俺を誰か褒めてくれ。

「理事長…そんなにつまりませんか?」

「何がだい?」

「…」

まず俺が引っかかったのが、"大切な可愛い甥"という部分。
そんな存在が、この人にいるはずがない。
天地が引っくり返ってもありえない。

「明日からが楽しみだよ」

そしてこの輝くばかりの笑顔。
…はっきり言って、嫌な予感しかしない。

「理事長、考え直して下さい」

「何故だい?」

「絶対に面倒事が起きるでしょう?絶対に」

大事な事だから、二回繰り返した。
この人は楽しい事が大好きだ。
というか、つまらない事を許さない。

「今の学園がつまらないんですか…」

「それはもう。あくびが出るよ」

「決定事項ですか?」

「よろしくね、結友君。期待してるよ」

キラリと理事長の目が光る。
俺は理事長の為に、どんなパフォーマンスをすれば良いのだろうか?

「そうそう、この子には変装をしてもらう事にしてね」

「…変装」

「ほら、この通り可愛い子だろう?それをこんな狼の巣に、そのままで放り込むなんて私には出来なくてね」

だから、変装。

じゃぁ連れてくんなと突っ込む事はしない。
ニコリと学園の生徒たちに騒がれるこの顔。
もう俺は、この顔には疲れしか感じないようになった。

「頑張ってあの子を守ってね」

「…」

ああ、これが目的ね。
俺は納得する。
つまり、最近平和ボケしている俺を為したいと。
無事にこの困難を乗り越えてみせろと。
そういう事だろう。

「ふふ、騒ぎになるのは目に見えているからね」

「…そうですか」

「私はやっと君の失敗を見る事が出来るのかな?」

「きませんよ」

そんな日、一生来ない。
というより、俺がこさせない。

「ねぇ、結友君…私を、失望させないでね」

「…ええ」

ゾクリと寒気がした。
俺を見つめる茶色の瞳。
暗い輝きを放つそれを、俺はしっかり見つめ返す。

「理事長代理として、期待に応えてみせますよ」

「そう?」

駄目押しにニコリと微笑む。
理事長はそんな俺を見て、愉快そうに笑った。

「だから私は君が好きなんだよ」

「そうですか」

いつもの軽口に、俺はそっけなく相槌をうつ。
そんな俺の態度に理事長は不服そうに顔を顰めたが、何も言われなかった。

「では僕はこれで。そろそろ総会が始まりますので」

「ふふ、君も大変だね」

ああ、誰かさんの所為でな。

「そうですね」

俺、宮野結友は柔らかく微笑んだ。