BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: BL/GL小説集 ( No.361 )
日時: 2013/08/17 07:56
名前: 黒猫ミシェル (ID: RGE11PHh)

【消えんなよ】幽霊×霊感持ち人間

カリカリカリ…

『なぁなぁ間城、何してるん?』

「…」

カリカリカリカリ…

『まーしーろー!俺暇やねんけどー』

僕は何も聞こない。
平常心平常心、生みよりも広い心で全てを流すんだ。
あー何も聞こえない。
何も見なーい。

『なぁー間城ー』

「…」

『…無視すんなら犯すで?』

「何?」

カリカリカリ…

『人と話すときぐらい手止めたらどうや?それが礼儀っちゅーもんやねんで』

「君はもう幽霊でしょ?幽霊に礼儀もクソもないよ」

『ほぉー言うたな?』

「…何さ」

不穏なクウキヲ感じて、チラリと幽霊を見る。
相変わらずチャラチャラした格好をしていていけすかない。

『礼儀もクソもないんやったら、間城に何してもええよな?』

「それに僕は関係ないだろ」

『大有りや』

幽霊は少し真面目な顔をした。
それに僕も少しだけ姿勢を正してみる。

『俺の姿見れて声聞こえんのは間城だけや』

「他にもいるかも知れないじゃないか」

『そんなんいちいち探す時間はない』

「…そ」

そうなのだ。
こいつは皆さんもうお分かりの通り、幽霊である。

『間城は、俺のことどーでも良い思ってるんやろ?』

「まぁ、そうだね。僕達赤の他人だし」

そういうと、幽霊は悲しそうな顔をする。
僕にはその表情をする意味が分からなくて、気付かない振りをした。

『間城なぁ、俺とお前はな、会ったことあるんやで?』

「え…」

『本当やぞ?たった一回やけどなぁ」

「ごめん…覚えてないや」

『そか…そうやな。たった一回やしな』

ドキリとした。
その顔が余りに悲しげで儚くて、もう消えてしまうんじゃないかと思った。

『俺と間城があったんはな、病院何や』

「病院?」

『せや。俺は動けなくてなぁ…ベットの中で寝とった。そんな時や、間城が来たんわ』

「何かの…病気だったの?」

『生まれつき心臓が弱くてな、もう生きてるのが辛かった。どうせ俺が死のうても、悲しむヤツはおらへんし』

「ごりよは?」

彼は笑った。


『おらんよ。俺にいるのは年の近い兄一人。そいつは金のかかる俺を、邪魔に思ってたやろな』

「そう…」

『間城はな、俺に花をくれたんや。綺麗なチューリップをなぁ』

「チューリップ?」

おにーさん、コレあげる!

良いんか?

うん!
おにーさん、なんかなきそうだから

ありがとな、ぼうず。

ぼくぼうずじゃないもん!
ましろだもん!!

ははっそうかーぼうずは間城言うのか!

うん!!

ありがとな、間城

昔の記憶。
朧気しか思い出せないけど、あの優しい笑顔は何となく覚えてる。

『あのあとたくさん話してなぁ。とても楽しかった』

「…うん」

『また来てほしかったけど、間城は来へん』

「…」

『もう死ぬって時にな、思うたんや。あの子はどうしてるかなって』

そしたら幽霊になっとった。
そう笑う彼は、とても綺麗だった。

『間城が霊感持ってて良かったわーせないと俺、幽霊になった意味ないわ』

「何でそんな、僕を…」

『何でって…そりゃお前、好きだからに決まってるやろ?』

「…好き?」

『らーぶ。愛してるんや、間城をな』

ちゅっ

軽くリップ音をたてて唇が離れていく。
僕は顔を赤くした。
目の前には、満足そうに微笑んで消えかかっていく幽霊…

「ってぇえ!?何で消えてんの!」

『んー満足したから、やろか』

足が、消えていく。
胴も、消えていく。

「か、勝手にキスしていなくなるつもりか?」

『堪忍なー?』

「消えるって言うのに何で笑ってるんだよ!」

消えかけてる腕に手を伸ばせば、ギュッと抱き締められた。

『間城は、そんな顔をせんといて?』

「そ、そんな顔って…?」

『泣きそーな顔。好きなヤツのそんな顔、見とーない』

「誰のせいだと思ってんだ!」

僕を抱き締める手が消えた。

『間城は笑っててな?そっちの方が可愛ええ』

「…消えんなよ」

『寂しいん?』

「当たり前だろ…騒がしいお前がいなくなるんだ」

『そういってもらえるだけで俺は嬉しい』

なぁ…
彼は笑っていう

『俺の名前呼んで?』

「拓斗…」

『聞こえんよー?』

「拓斗!」

顔だけにった彼は、僕にはボヤけて良く見えない。
彼がどんな顔をしてるか見たいのに、見えなのが辛い。

『泣かんでや、間城』

「た、拓斗がッいけないんだろっ!」

『うん、ごめん』

「拓斗…好きだよ」

最後に彼にと、涙でグチョグチョの顔でほほえんでみせる。
雰囲気で、彼が泣いたのが分かった。

『やめてぇや。未練がましくなるやろ』

「うっぅ」

残ってよ、何で言えなかった。
幽霊にとって成仏は、一番幸せなことだから。

『バイバイ、間城』

「拓斗も、バイバイ…」

『「元気で」』

そう僕達の口から、自然に言葉か出て。
それが僕が聞いた拓斗の、最後の言葉だった。