BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: BL/GL小説集 ( No.372 )
- 日時: 2013/09/15 19:51
- 名前: 黒猫ミシェル (ID: IcK/upD1)
【もしも○○が男だったらシリーズ】
お題:もしもかぐや姫が男だったら
2.伊志津久利の求婚
「ああ美しい香久夜、どうか私と結婚してはくれませんか?」
「嫌に決まってんだろ。死ね」
額に手を当て、眉間にシワを寄せる香久夜の美しい事美しい事。
伊志津久利は、暫くその表情に魅入りました。
「俺は男だ。他にもお前を含め五人も求婚しに来やがった」
「ご、五人も…ですか」
「そうだ。ウザ過ぎてそろそろキレそうだぜ俺は」
言ってる事はかなり酷いのだが、伊志は気にもとめなかった。
というか、香久夜の言っている事は全て綺麗な言葉に変換されていた。
自分の中の香久夜のイメージを壊さ無い為に。
何とも自分勝手な貴公子である。
「香久夜、その様な顔をなさらないで」
「お前がさせてると言う事実に気付けこの阿呆」
「香久夜…」
香久夜は呆れた視線を、津久利は憧憬の視線をお互いに向け合う。
伊志がその整った唇へと無意識に顔を寄せた時、パンッと音が響いた。
鳴らしたのは言わずもがな、香久夜である。
「そうだ、俺の願いを叶えてくれたらその求婚…考えてやっても良いぞ」
「願いですか?香久夜の願いなら何なりと!!」
「俺の前から今すぐ失せろ」
「それでなんなのですか、香久夜の願いは?」
「……お前、俺の話聞けよ」
ハァ…と香久夜は溜息を吐いた。
頭痛が酷くなってきた頭を軽く揉みほぐす。
その動作にさえ津久利は見惚れていた。
「仏の尊い鉢ってのがあるそうだから、それ探して持ってこいよ」
「仏の尊い鉢…ですか」
「ああ。持ってこれたら求婚してやるよ」
ニヤリと笑う香久夜。
しかし津久利にはこう見えた。
《津久利フィルター》
「ええ。それを持ってきて下さったら、求婚をお受け致しますわ」
悲しげに長い睫毛をふせる香久夜。
ああ、きっとこんな難題を吹っかけるのは何か訳があるに違いない!!
「探して来て…下さる?」
ウル…
ウルウル……
「っもちろんです!!この伊志津久利、命をかけて探して参ります!!」
「ありがとうですわ」
香久夜は柔らかく微笑んだ。
《津久利フィルター終了》
「何年かかるか分かりませんが、待っていて下さい!!」
「あ、あぁ…」
ガシリと掴まれた手にギラリと光る眼光に、香久夜は身を引く。
それでは、と伊志津久利は颯爽と去って行った。
月日がたち。
都では、伊志津久利が神隠しに合ったのだと噂された。
そんな噂知る由も無い香久夜は、翁の肩を優しく揉んでいるのであった。