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Re: BL小説【長編決定アンケート実施中】 ( No.384 )
日時: 2013/10/11 21:00
名前: 黒猫ミシェル (ID: woIwgEBx)

【魔王覚悟しろ!…うぁ、ああーん!……え?】ファンタジー

長い長い旅立った。
魔王を倒す為に旅に出て、三年が過ぎた。
たくさんいた仲間も減って行き、今では皆その辺で遊んでいる。
…いや、別に見放されたとかそんなんではないぞ!断じて!
ただ、そう…魔王に操られたんだ…と思う、うん。
そして今俺の目の前にある、魔王の部屋の扉。
俺は勢い良くそれを蹴破った。

バァッッン!!

「魔王よ!俺が来たからにはもうお前の好きにはさせない!」







ん?

目の前に広がる光景に、俺は唖然とした。




「あぁ、よしよし、ほーら高いたかーい」

「あぁーうー!うえっうぇえーっ」

「魔王様、ほら可愛い可愛いお人形ですよー!」

「魔王様美味しいミルクもありますよ!」

「魔王様新しいご本ですよー!」

「ひっふうぅーっ」

「「「だから、だから、どうか泣き止んで下さい!!」」」

やけに豪華な服をきた赤ん坊を、必死に宥める魔族共。
俺の記憶に間違いがなければ、あいつ等は確か魔王の側近ではなかったか?
今赤ん坊に慌てふためきながらミルクをやっているのは、魔王の片腕、ルシエルファじゃ…
俺はハッとして大声をあげた。

「おい!勇者様が来てやったぞ魔族共!!魔王を出せっ」

「うるさいんですよ!」

「黙れ馬鹿野郎!」

「今せっかく魔王様が泣き止んだのにっ」

「「「どうしてくれん(ですか)だ糞野郎!!」」」

「ぁ、ひぅっう"あ"あーーーっうえぇっ」

泣き喚く赤ん坊…いや、魔王。
小さな魔王に構い倒す側近共。
俺は、俺は、

「バカはお前らだ!赤ん坊にそんなことしやがってからに!」

「「「あっ」」」

泣いている赤ん坊を抱え上げ、優しく背中を擦ってやる。

「えあ"ーあ、ぁーぅ…ひぅ……」

「「「泣き止んだ!!!」」

「あの魔王様をいとも簡単に泣き止ませてしまうなんて!」

「見ろよ!もうお眠りになってるぞ!」

「何て可愛らしい寝顔なんだ!」

「ああ、魔王様…何て愛らしい…」

魔王の寝顔にだらしなく口を緩めて目を細める側近。
俺は言った。

「良いか、お前ら!泣いてる赤ん坊はまず背中を優しく摩ってやるんだ」

「成る程…」

「背中をお摩りすれば良いのか」

「メモしとかなきゃな」

真面目な顔してメモを書くその姿に、俺は感心した。

「それに、このミルクじゃ熱すぎる。人肌ぐらいしなきゃ駄目だろ?」

「人肌か!」

「そうですか…だからお飲みにならなかったのですね…」

「メモしとくぜ」

いや、魔王に最適なミルク温度何て知らねぇけどよ。
普通の人間はそんくらいじゃなきゃヤベェだろ?
魔王でも赤ん坊なら…ってそうだった!

「おいコイツ魔王だろ!?何だこの姿は!!?」

「今更なんですか?魔王様は魔王様です」

「そういえば…コイツ誰だ?」

「…その鎧に兜…そして勇者の剣…」

「「「勇者か(ですか)!!」」」

え、何だ。
コイツ等気付いてなかったのか?

「俺は魔王を退治しに来た勇者様だ!覚悟しやがれ!」

「「「ッ…」」」

その言葉にいきり立つ側近。
俺は魔王に剣を素早く向けて、素早く…下ろした。

「あぅー?」

「ぐっ」

コテンと首を傾げる幼い魔王…クソっ可愛いじゃねぇか!
コイツに剣を向けるなんて…殺すなんて…出来る訳ねぇ!!

「悪かった…俺は帰る」

「待ちなさい」

今してしまった罪悪感に苛まれ、帰ろうと背を向けた俺に、静止の声がかかった。

「あなた、魔王様の子守が係りになりませんか?」

「赤ん坊の扱いになれてるお前になら、魔王様を任せられる」

いやいや、俺勇者だし。
魔王を退治しに来た存在だし。

「どうです?報酬はこの魔王様の可愛らしい笑顔です」

「……」

キャッキャと鈴の様な笑い声を上げる魔王を見た。
この笑顔を毎日見れるなら…

「良いぜ。その申し出、受けてやる」

「良かったです。部屋を用意させるので、少々お待ち下さい」

俺はこれからの魔王との生活を想い、笑みを浮かべた。