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Re: BL小説【長編決定アンケート実施中】 ( No.387 )
日時: 2013/10/15 18:39
名前: 黒猫ミシェル (ID: woIwgEBx)

【Killer】元暗殺×暗殺者

何人何人も何人も、数えられないくらい命ずられるまま殺してきた。
洗っても洗っても落ちないあの腐臭。
分かるヤツには分かるだろう。
決して消えることのない、この両手に染み付いた血の匂いを…。

「探せっ!!」

「何としても捕まえるんだ!アイツをッ」

「捕まえられなかったら!俺達があの方に殺られるんだぞッ!!?」

どしゃ降りの雨が降る闇夜。
俺は気配を隠しながら、かけていた。
必死に俺を探す声を背中に、あいつ等に心の中で謝罪をしながら。
あんな雑魚に、捕まえられるはずがない。
捕まえる所が、俺の気配を読むことすら出来ないだろう。
そして殺されるのだろう。
俺に執着していた、あの組織の頭に。

「どこだ!どこにいるんだZERO!!」

「お願いだから捕まってくれッ」

「まだ死にたくねぇよおッッッ」

「ZEROーーーッ!!」

ZERO、俺の名前。
もう聞くことも、使うこともないように。
俺は全力でアイツから逃げる。


サヨウナラ

***

「っは…ここ、で…一休み、するか……」

額から滴り落ちる汗をぬぐう。
数時間は走り続けただろうか。
荒い呼吸を整えながら、俺は当たりを見渡した。
キラキラと反射して光る雨。
色とりどりのネオンが闇夜を照らす。
それはまるで、夜空に輝く星のようだった。
俺は感嘆の吐息をはいた。

「仕事で来たことはあったけど…こんなにゆっくり見たのは始めてだ」

「なーんの仕事ぉ?」

「ッ!?」

その声に直ぐ様臨機体制をとるが、俺はハタと思い出す。
ついいつもの様に構えてしまったが、ここはただの路地裏。
声をかけられただけでナイフを構えるなんて、クレイジーだと思われるだろう。
問題なのはコイツの気配を、声を掛けられるまで気付かなかったことだ。

「お前…いつからそこにいた?」

「君がここに来た時からだよー」

「ッ…」

緊張で、喉がかわく。
緩い見た目としゃべり方、一見町に良くいるチャラ男の様だが、外見で判断すると痛い目を見る。
その事を、俺は身を持って嫌と言う程体験していた。

「その手にもってるナイフをしまおー?危ないじゃん」

「…」

スキがない。
もしかしたら、俺を追ってきたアイツの狗かも知れない。
一瞬の油断が、命取りになる。
俺は普通のヤツなら倒れてしまうだろう殺気を込めて、睨み付けた。

「君見たとこ中学生かなー?中学生の口から仕事何てねー。興味あるなぁー」

「五月蝿い…」

俺の殺気をモノともしないその姿。
背中に、冷たい汗が流れ落ちた。

「もしかして夜のお仕事ー?」

「…そうだ」

「へぇーホストとかー?君綺麗な顔してるもんねぇ」

「そうか」

ニコニコ笑うその顔。
適当に喋りながら、間合いをとって逃げ出せる通路を確保しにかかる。

「じゃあ俺も君の働いてるトコいきたいなー?」

「好きにしろ」

「やった♪じゃあ今からいこっかなぁ……何て、ね」

「お、まえ…」

ヒヤリと漂う冷気。
まるでアイツの様なソレに、俺は身体が震えだすのを止められなかった。

「俺には分かるよ…消して消えないその臭いがねぇ」

「…ッ、……」

「君、アサシンでしょ。何人も殺してきたんだね、その汚れた手で?」

「黙れっ!!」

恐怖に耐えきれず、目の前の男に飛びかかる。
絶対に、心臓を抉れたと思ったのに。
俺は簡単にヤツに押さえ込まれ、逆にナイフを首に当てられていた。

「ごめんね、ちょっと確認したかったんだ」

「確認、…だと?それは俺をアイツの所へ連れていくためか?殺すためか?」

「違う違う。ホラ、泣き止んでよー」

困ったように笑うソイツに、何故だか安心して。
俺は身体に入れていた力を、少し抜いた。

「僕もねー気づいてると思うけどぉ、元アサシンなんだぁ」

「…あぁ」

なのに、お前はそんな風に笑えるんだな。

「僕の家に一先ずおいで。話はそれから、ねぇ?」

「あぁ…」

本来ならついていかないだろう。
当たり前だ。
俺より強く、こんな得たいの知れないヤツに。
しかも首にはまだナイフが当てられたままだ。
さっきのやりとりもある。
でも俺はさっきのコイツの困ったような笑顔を見た時、思ったのだ。
コイツになら…と。

「お前は…安心するな」

「あははっ!血濡れた僕の手が安心するなんてねぇー」

君、変わってるよ。
そう言われ、俺も言ってやった。

「お前の方が変わってるよ。暗殺者だと分かってるヤツを、家に呼ぶなんてな」

「綺麗な子は暗殺者だろうと大歓迎さ」

チュッとリップ音を響かせ、頬にキスを落とされた。
それが何故だか無性に恥ずかしくて。

「俺に手を出したら殺す」

「君になら良いけどぉー。僕の方が強いんだから♪」

「死ね」

思ってもいない憎まれ口をたたく。

「いい加減身体を離せ」

「やーだ♪」

雨に濡れて冷えた身体は、いつのまにか温かくなっていた。