BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: マリオネットに恋をした、 【よろず短編集】 ( No.12 )
- 日時: 2012/04/06 08:47
- 名前: ゆいむ ◆xFvCQGVyfI (ID: 8pAHbekK)
- プロフ: にょネジとヒナタが書きたかった。後悔はしていない
「ネジ姉さんは、とてもつよいです」
「……どういう意味でしょう、ヒナタ様」
進めていた足を止め、振り向き様にネジは質問を投げる。
確かに、客観的に見て自分は強い部類に入るだろう。女ながらに現当主の兄——即ち自分の父に、「おまえは日向の血に愛された」とまで言わしめた。
今までも賞賛されることは多々有った。それは同僚からの言葉であったり、担当上忍からの言葉であったり、はたまた火影であったり。しかし、自身が守るべき存在——宗家のヒナタと言う従弟からは、今まで告げられたことの無かった言葉である。
「姉さんは強い。男の私よりも、ずっとずっと。でもそれは肉体的な強さ、戦いにおける強さだけではなくて、ええっと、えっと……」
静かに静かに、優しく言葉をじっくり選別するヒナタらしい言い草だ。それをネジは足を止め、昔に比べ幾分か柔らかになった表情で見守る。
男らしく無い、次期当主として情けないと言う声も有る事は確か。だが、この優しい人柄が日向の中で受け入れられてきたと言うことも、また確か。
考え終わったのか、ヒナタはまた顔をあげる。今度はその顔に、言葉通り日向の様な暖かく柔らかな笑みを浮かべながら。
「姉さんは、とてもとても優しいのですよ。憎んでいた私を、許してくれるくらいに。心もとても強くて優しいなんて、憧れてしまいます」
「そんな、優しいなんて」
ネジはいささか驚いた表情をする。彼女自身は、自分の周りにヒナタほど優しい存在も居ないと思っていた。萎れた花を見れば水をやり続け、子供の笑顔を見ては自分も微笑み、決して人を無下に扱わない。優しい、優しい従弟。
だがそのヒナタが、自分を優しいだなんて。どうしても何故か分からない。
自分はヒナタに特別優しいことをしてきた訳ではない。憎み、恨み、妬み、父の仇と理不尽な感情をぶつけ、あまつさえ命まで奪おうとした。
そんな自分が、優しいと?
「ネジ姉さんは、とても優しいのですよ」
もう一度言って微笑んだヒナタを見て、ネジは小さくヒナタ様ほどではありません、と呟く。
彼がこんなに言ってくれているのだ、信じても良いだろう。優しいと思い込んで、それを実行して、そうしたら何時の日か、優しくなれるのだろう。
目の前で笑う彼を見て、ネジも少しだけ笑った。
-----とびきり優しい愛しいあなたへ