BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: マリオネットに恋をした、 【よろず短編集】 ( No.13 )
日時: 2012/04/06 22:19
名前: ゆいむ ◆xFvCQGVyfI (ID: 8pAHbekK)



 雛乃は、綺麗だ。
 あたしみたいにガサツじゃないし、ちゃんと女の子らしい、というか、良い香りがする。雛乃の髪は白くてもふもふしてる癖に一本一本は綺麗だし、俗にいう天使の輪と言うヤツはくっきりはっきり、だ。色も白い。極めつけに睫毛は長く、指も細く長く、ついでに足も細く長い。考えながらちょっぴり泣きたくなって来たのは秘密、だ。
 一度だけ、雛乃に綺麗でうらやましい、と本音をぶっちゃけたことがある。その時の雛乃は面食らった顔をしてから、少しだけ怒った顔をした。何故だかは分からないけれど、個人の事情をいちいちぶつけるな、という意だろうか。今思えば、悪いことをしてしまった。
 何と言うか、女の子の憧れを詰め込んだ様な子である。例えるなら神話に出て来る女神の中の女神、いちばん美しい美の象徴、と言うべきか。名前は忘れてしまったが、そんな神様が居た気がする。
 
 神様も大概、不公平だ。





 佐田は、うつくしい。
 私の様に、人に守ってもらわなくちゃ生きていけなーい、という雰囲気が漂っていない。とっても強くて、にこっと笑った笑顔がとても素敵で、つまりうつくしい。顔は愛嬌のあるくりくりの瞳と、健康的に日焼けした肌のおかげで可愛いといった形容詞が似合うけれど、その言葉や姿勢や人に接する態度、分け隔てない笑顔、それらはとてもとてもうつくしい。
 佐田に一度、「雛乃は綺麗でうらやましい」と零されたことがある。思わず何を言うか、とびっくりしてしまった。私なんてなよなよしていて、まるで飼われたウサギではないか!と反論したくなったが、ぐっと我慢した。だって佐田は、あまりにも哀しそうな顔をしてたのだから。
 良く、ヴィーナスという称号をもらう。ローマ神話の中で最も美しい女神だ。でも私は、エリュシオンという楽園の中で、ひとり人を思いながら、耐え忍んでいるサターンの方が、好きだ。

 神様も大概、意地が悪い。



               -----美しい女神が望んだのは、うつくしい彼女でした。