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Re: 125円の噺 【よろず短編集】 ( No.19 )
日時: 2012/07/14 10:34
名前: ゆいむ ◆xFvCQGVyfI (ID: MSa8mdRp)



「なあリオン機嫌直せって。ほら俺のケーキやるから。ジュビアお手製の」
「……いらない」
「え、ちょ」



 ◆Do You Understand?



 どうしたんだろう。この姉弟子が、俺たちが天狼島から帰って来てからすっかりジュビア馬鹿になった姉弟子が、ジュビアの作ったケーキを食べないなんてどうかしてる。
 そりゃあ仕事帰りにジュビアを見たいからってうちのギルドにわざわざ寄って、でもジュビアが居なくって、ショックだったのは分かる。三分くらい机に突っ伏して、死んだ魚の目で俺たちを見上げてたのは事実だ。
 元の状態に戻ってから、せめて慰めてあげようという弟弟子の優しい思いつき(プライスレス)でケーキを差し入れたのに、水を得た魚の眼差しと共に、きっぱり首を振る。横に。


「はあ? ちょ、熱あるんじゃねーのリオン」
「そんな事ない、至って正常だこのバカ弟弟子」
「最後は余計だコラ」


 心配したのにこれだ。
 唇のはしっこに小さく笑みを浮かべ、ハンッという擬音が似合う言葉を吐き捨てる。ついでに突っ伏していた体勢を戻し、こきこきと首を鳴らしながら俺の方を見つめた。
 その目には、さっきまでは無かった強い光が宿っている。思わず固まって、リオンの言葉を待った。


「そのケーキ貰ったの、お前だけだろ」
「え、そうだけど。なんで分かったんだ?」
「これだから年中半裸バカは。すごく凝ってるぞ、それ」
「……マジ?」


 恐る恐る皿に置いてあるケーキを見ると、確かに。
 何層にも重なった生地。きれいに溶かして作られた、うちのロゴの飴細工。むらが無いように塗られたクリームは、指にとって舐めるとすっと溶ける。味は甘さ控えめで俺好み。
 そっと姉弟子の方を見ると、存外優しい微笑を浮かべていた。


「な? ジュビアちゃんは、おまえの事だけを想って、これを作ったんだ。それを私が無下にする事なんて出来ない。おまえの為だけに作られたんだ。おまえが食べて、ちゃんと感想を言え。美味しかった、だけでも良い。それだけでもきっと喜ぶからな」
「…………あー」


 さてじゃあ帰るか、とリオンは腰を浮かす。ゆるりと白銀の髪を払いのけ、通りかかったレビィにご苦労様と言われ苦笑し、もう一回俺の方を振り返った。


「おまえ、ジュビアちゃんのこと、大事にしろよ」


 こんな素直で可愛くて一途な子、今時居ないぞ。
 そう言って扉の方を向き、ヒールを鳴らして去って行くリオンは、例えジュビア馬鹿だとしても、とても格好よく見えた。





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原作リオン様だとキャラ崩壊ひどすぎて見てられなかったので、女の子にしたらきっとカッコイイ姉御になるんじゃねえかと閃いた結果がこれだよ!

リオン♀はジュビア馬鹿だけどすごく女心の分かる人だと思う。ちなみにリオン♀が百合っぽいのはジュビア限定です、ここ重要ですから赤で三重線引いといて下さい。