BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 125円の噺 【よろず短編集】 ( No.24 )
- 日時: 2012/08/29 15:28
- 名前: ゆいむ ◆xFvCQGVyfI (ID: pkkudMAq)
- プロフ: にょたかみどたか※女の子の日ネタ注意
「っ……お、あー……いっつぅ」
また来やがった!
意味不明で真ちゃんの毒舌と同じくらい——いや、それよか暴力的な痛みが腹部をクリーンヒットする。というか、戻ってくる。戻ってくんな今すぐ消えろください、と叫びたいけど生憎ちょっと前を真ちゃんが歩いている訳で。心配をかけたくない一心で声のボリュームをダウン。
くるり、前を歩く真ちゃんが不機嫌そうな顔で振り返った。綺麗な深い緑色の髪が揺れる。やばい、気付かれたかなぁなんて思いながら、口角を必死でつりあげてにまっと笑う。真ちゃんは相変わらず不機嫌そうだけど、……ああ、これは。
「……どうしたのだよ、高尾」
「えーなになに真ちゃん? あたしの事ちょっと心配しちゃった?」
「別にっ……そんな訳ない、ただいつもより静かで調子が狂うだけなのだよ」
「うっはー、心配してくれてんじゃん! 和乃うっれしーい」
「あまり言葉を伸ばして発音するな、気持ち悪いのだよ」
ひっでーなぁ!ともう一回笑ってやったら、真ちゃんは少しだけ表情を緩めた。あれはほっとしてる顔だ、良かった、やり過ごせた。
その一瞬。油断して気を抜いたのが間違いだった。若干丸め気味にしていた背中を、伸ばしてしまったのも間違いだった。一気に痛みが腹に猛アタック。やめろマジやめろ。
……あ、ちょ、タンマ。これマジだわ。
「うぐ、ぎゃー……いって」
「…………高尾?」
後ろを怪訝そうに振り返って、へたりこみつつ自分で自分の腹部をだきしめているあたしを視界に入れた真ちゃんは、ぎょっとした顔をする。あ、レアな顔だわ。
すぐさま横にしゃがみこんで、さすさすと背中をさすってくれる。真ちゃんの手が背中を往復していくのが分かる、なんかそれだけで痛みが引くような引かないような。
「あー、ありがとね真ちゃん。もうだいじょぶ、」
「うるさい黙れこれを付けていろ」
テーピングを巻いた左手でポケットをさぐり、真ちゃんはずいっとあたしに何かを突き出して来た。
よくよく見たら、小さく「これであなたもほっかほか!」と書いてある。少し秋めいているとはいえ、八月の下旬に持つような代物ではなかった。
「……なにこれ。嫌がらせ?」
「ばっ、違うのだよ! お腹が痛いのなら温めれば良いと思って、わざわざラッキーアイテムを出してやったというのに!」
「えっ、ちょ、今なんて言った?」
かあっと顔に赤を帯びさせてぷりぷり怒る真ちゃん、の台詞の中には、聞き捨てならないものも混じっていた。ラッキーアイテム? と言えば、おは朝だ。じゃあ、誰の? と言ったら、たいていの確率で真ちゃんのだ。たまに気まぐれで蠍座の——つまりあたしのラッキーアイテムを持ってきてくれることもあるけど、やっぱりラッキーアイテムと言えば真ちゃんのだ。
「バカじゃないの真ちゃん。ラッキーアイテム無くなったら、真ちゃんすごいことになるじゃん」
「ふん、私を誰だと思っている。人事は尽くし済みなのだよ」
ずららっ、という効果音が似合う様な勢いで、真ちゃんの手元に四枚のホカロンが陳列する。なくすと困るから五枚一組のものを買っておいたのだよ、と真ちゃんはちょっぴり得意げなドヤ顔で言い放った。
ぷ、と思わず吹き出す。
「んじゃー、お世話になっちゃおうかな」
「ふん。それの効果が切れたらまた言うと良いのだよ」
真ちゃんは、律儀に立ち上がるのに手を貸してくれた。
◆本日の幸運をキミに捧ぐ
(このぐらいなくなっても、キミが守ってくれるでしょう?)