PR
BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: マリオネットに恋をした、 【よろず短編集】 ( No.3 )
- 日時: 2012/03/14 14:26
- 名前: ゆいむ ◆xFvCQGVyfI (ID: wIAOO7NO)
ざく、ざく。
ひとりしか居ない部屋に、重苦しい音が響く。俺が手を動かす限りえんえんと、ざくざく、ちょきちょき。ああ鬱陶しい。
手の指を動かすたびに銀の鋏が動く。次々に、汚いねずみ色をした俺の髪が落ちる。本当に汚らわしい。まるで俺みたいだ、と鋏を動かしてありきたりに笑ってみたりした。
すっと髪の断面を撫でると、ざらざらの手触りだった。切り揃えられていない、不格好な髪。これを見たらアイツは何と言うのだろう。
きっと、優しい奴のことだから、大げさに見えるほど驚くのだろう。大丈夫、とかどうしたんだ、とか色々なことを言うに決まってる。馬鹿らしいほど優しい、あいつのことは、ほとんど知っている。
馬鹿らしいのは俺だ。こんなに想って、アイツのことをほとんど知り尽くしてしまった。まるで少女漫画のヒロインのように。あんな風に無様にはなるもんか、あんな風になるはずが無いと鼻で笑っていたのに。
また俺は、馬鹿のひとつおぼえみたいに繰り返す。期待して、焦がれる。アイツの心が、少しでも傾いてくれないかって。何度も何度も。
鋏を床にほうると、乾いた金属音がした。
( 「げんだ、それでも、」 )
---------------------------------------- 裁ち切れたら楽なのに ----------
PR