BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 神様、それはあまりにも不公平です。 ( No.107 )
日時: 2013/08/15 12:41
名前: 夜藍 (ID: rfy7IlR/)

第三十八話。





空がオレンジ色に色づくころ、俺はようやく一教科分の課題を終わらせることができた。
凝った肩を回し、首を回し、伸びをした後目の前のメルレッティを見やる。

左側に積み上げられていた本が右側に移動している。きっとこの時間内で読み終わったのだろう。驚異的な速さだ…正直恐怖すら覚える。
左側の本は残り三冊。今読んでいる本を合わせて残りは四冊だろう。
「メルレッティ。」
僕が呼び掛けるとメルレッティはゆっくり顔を上げた。
「あ…光様すみません…没頭していました…。帰られるのですか?」
「ああ、そろそろな。」

そうですか、と立ち上がるメルレッティは本を抱える。
その中にはまだ読んでいないであろう本も紛れていた。
「メルレッティ、まだ読んでない本があるだろ?」
「はい…ですが、お時間なので…。」
名残惜しそうに本を眺めながら俯くメルレッティの手から本を奪う。
四冊分の本を手にして僕は少し笑って見せた。
「なんの為の図書館だと思ってんだバーカ。これ貸出手続してきてやるから、読んだ本戻してこい。」
「…はい!」

少し腕を震わせながら書架に本を戻しに行くメルレッティを見送った後、貸出カウンターへ向かった。
喜んでくれたなら何よりだ。少し僕もいい事をした気がして気分もよくなる。
カウンターに向かう途中、少し本の内容が気になったので開いてみると神々にまつわる話が一冊と、他は明らかに日本文学ではないものばかりだった。
英語でもない…きっとメルレッティが育った地域の言葉だろう。
どんな内容かは解読できないが、母国を思い出しながらこれを読むメルレッティが目に浮かび、何故だか心が痛んだ。

「光様。」
いつのまにやら隣にいたメルレッティが首を傾げる。
「何でもないよ。」
手続の終わった本を受け取りメルレッティに笑いかけた。
「帰ろうか。」
「はい。」



夕日に染まった少し涼しくなった町に、自転車の影。
下り坂をスピードをあげながら思いっきり下る。
少し楽しいと思えた夏休みの話だ。