BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 神様、それはあまりにも不公平です。 ( No.11 )
日時: 2012/05/04 17:49
名前: 夜藍 (ID: DZWfhZUD)

第四話。

「…」

僅かな沈黙の後僕は手元にあった目覚まし時計をフィリアーと名乗るそいつに向かって投げた。
野球経験は一度もないってのにおかしな程まっすぐ飛んだその目覚まし時計をパシッと両手でフィリアーは止めた。
すげえ反射神経だ。いや感心してるとかそんなわけじゃないけど。別に褒めてもないからな。
「いきなり物を投げてくるとは何事だ、無礼者。」
「お前こそいきなり人の家に侵入してなに裸で寝てんだ。真の変態かクソヤロウ。」
男二人の攻防戦なんて誰が求めてるだろうか。少なくともこんなの誰も求めてないだろうに。

「いったであろう、私は神様だ。」
「人の家で無断で裸で寝てるやつが神様ならこの世界ぶっ壊れてるわ!第一そんなの言ったって小学生も信じねえよ。どこぞの名前書いたら人死んじゃうノート手に入れたやつだって『俺は新世界の神になる』って宣言してるだけなんだよ。宣言なの。神様にはなれねえんだよこの中二病患者。」

よっしゃ、言ってやった!
こんだけ言ったらこいつだってしょげるだろ、ビビるだろ。
完全に勝った気分でいる僕に「ふむ、」とフィリアーは頷いた。
「やはり説明をせねばならんらしい。」
人差し指を僕に向けフィリアーは淡々と話し始めた。

「言っておこう、先ほどお前がみたトラックに轢かれる夢…あれは“夢”ではない、“現実”だ。お前は一度、“死んだ”のだよ羽生光。だが私はお前を気に入ったためお前を助けた。それが昨日の事だ。金曜日の八時二十六分、トラックに轢かれたお前をな。」

ちょっと待て意味わからんぞ。
僕が、“死んだ”?
それをこの変態男が助けたって、え?
訳の分からない事を喋られて周りに「?」がいっぱい飛び交う僕をよそにフィリアーはすっと何かを取り出した。

いや、手の中から“出てきた”と言った方が正しいか。

ふわり、と黒い黒い妖しげな光を発している塊が宙に浮いている。
ファンタスティック!としか言えないようなこの光景の中でフィリアーはニッコリ笑った。
「これが死んだお前の魂だ。」
そう言うと不気味な塊にいきなりパリンと亀裂が走り砂のようになって消えていった。
「これでお前が死んだという事実はこの世に存在しない事になった。」

いや僕の魂ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
死んだとしてもそれ僕のだからね!?そんな笑顔で壊さないでくれ!

とりあえずはもうこれ、信じるしかなさそうだな…。
僕がため息を吐いてフィリアーの方を見ると何故かもう服を着ていた。
まあ全裸でいるよりはマシだけどな…。
Tシャツにジーパンという軽装をしてる神様って皆どう思う?

その神様がいきなり僕に近づいてきて笑っている。
いきなり来るな!ビビるだろ!そう内心思いつつ僕も笑った。
ここで弱味握られちゃいけねえ。
顔もち…っかい…。

「ただ、お前は生き返った代わりに代償を支払わなければならない。」
「…は、い。」
つい敬語になってしまう。弱味握られっぱなしじゃねえかクソっ!
焦ってる僕にフィリアーは言い放った。


「代償は、体で支払え!」