BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 神様、それはあまりにも不公平です。 ( No.38 )
- 日時: 2012/05/14 10:08
- 名前: 夜藍 (ID: eVWzcu6j)
- プロフ: 今日は代休なので一気に更新します!
第十三話。
僕はこういう時の為に折り畳み傘を常備している。
この間もいきなり雨が降り出してずぶ濡れで帰ったら、母さんにすごく叱られた。
悪かったよ、せっかくワックス塗り立てのフローリングをビシャビシャにしてさ。
フィリアーはと言うと「部活見学にでも行ってくる」なんてのんきな事を言っていたので先に帰ることにした。
靴箱で「うわ〜傘持ってない〜」という声があちらこちらから聞こえる。
ふっ、僕は君たちとは違うんだよ的な目線で声の主を一瞥した後、折り畳み傘を開いて悠々と外へ出る。
その時折り畳み傘を開くのに手こずったなんてカッコ悪い醜態を晒したなんていうのはもちろん秘密だ。開くときに指挟んだなんてそんな。
あれだけドヤ顔で開けてたのにあれはないな〜うん、ないわ。
普通の傘とは違い、折り畳み傘は小さい。
重々承知だがな、そんな事。…うん。
いや、思ったよりも小さい!!
鞄は完全に外に出ていてずぶ濡れだし、僕の肩もはみ出していて濡れている。
なんかさっきドヤ顔で傘開いたのバカみたいじゃんか、これじゃあ走って帰るのと変わんねえよ!!
一人で地団駄を踏むという結構痛い行為をしていると、後ろからぽんっと肩をたたかれた。
振り向くとそこには僕の友人の、雨月蛍がニコニコと笑いながら立っていた。
佐久真と同じく結構仲のいい人で、よく喋る人物。
「お前ずぶ濡れじゃねーかよー!」
ハハハッと笑うその笑顔は爽やかだ。いやフィリアーとはまた違う感じでなんだけど。
彼は根っからの野球好きで野球少年。もちろん野球部に所属している。
甲子園目指してひたすら頑張っているから、勉強が結構疎かになってすごい点数を連発しているが。
そんな彼は折り畳み傘ではなく普通の傘をさしている。
多分置き傘でもしてたんだろう…っていうかその手があったじゃん。
少しうなだれる僕に雨月は少し距離を縮めた。
「こうすりゃ、俺の傘のお陰で濡れずにすむだろ?」
「あ、ありがとうございます…!!」
ぽわぽわモードに僕は突入する。あ、読者の皆さん!決して僕が本当は乱暴者なんだとか画面の前で言わないでね!伝わっちゃいそうで怖いから!!
「そーそー、今日来た転校生!あれ羽生の所に居候してんだろ?親戚とか何とかで。」
もちろんフィリアーの事だ。僕は苦笑しながら「はい。」と頷いた。
「なんでそんな顔して言うんだよ。嫌な奴なのか?」
「そういうわけではないんですが…少し、変わった人で。」
内心すっごく嫌なんだけどな。少しどころじゃない変わりかたしてるけどな!
僕が拳を握りつつ笑顔を作って「まあ、でもいい人ですよ。」と言うと雨月は「そっか。」と言って宙を眺めた。
「雨月くんはどうなんですか?最近。」
え、俺?と言う風な顔をしたが、雨月はうーん、と唸って「いつも通りだよ」と笑った。
「もうすぐ試合だからな〜あと勉強が嫌。」
「それは…逃れようがないというか、学生の宿命ですからね。」
僕がまた苦笑する。でもここで雨月に忠告しとかないとな。
くるりと半回転して雨月の方を見る。僕は背が低いので、自然に上目遣いになってしまうのが気に食わないが…もっと伸びろよばかあ!
その状態でニコッと笑い僕は言う。
「でも、雨月くんも勉強しないと留年しちゃいますよ?雨月くんと進級できないのは寂しいです。」
まあ口きけるのなんて二人くらいだし、正直な感想だ。二人が居なかったら寂しい。もちろん雨月と佐久真の事だが。
僕の忠告を聞いた雨月は一瞬目を見開いたかと思うと、僕の頭をわしゃわしゃしだした。
「何するんですかー!!」
「お前可愛い〜子犬みたい〜!!」
子犬、と言われて僕は頬を膨らませた。いい気はしない。子犬なんて。
「褒めてるんですか、けなしてるんですか?」
その様子に雨月はフッと笑う。
「褒めてるよ!あー面白れぇー。」
「僕の事バカにしてません!?」
反論しながら男子二人は通学路を歩く。
ゆらゆらと淡い気持ちを乗せて。