BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 神様、それはあまりにも不公平です。 ( No.70 )
日時: 2012/06/29 19:23
名前: 夜藍 (ID: eVWzcu6j)
プロフ: 期末テスト…終わった…色んな意味で…

番外編 「夏祭りと私と」 三話


「珍しいな、佐久真が一人なんて。」
隣に座った雨月くんは私に無邪気に笑いかけた。
一点の曇りもないその笑顔が何よりも今の私に痛いというのに。
私は苦笑しながら「そうだね」と言う。

「でも、別に、いつも一人だよ…。」
「…なんかあったか?」
「ふぇっ!?」
雨月くんの予想は的を得すぎていてつい奇声を発してしまった。
なんでこの人は分かるんだろう、なんて思ったけど。

「お前、そんな思いつめた顔してたら分かるよ。」
「そんなに顔に出てた!?」
「出てる。お前笑う時はもっと本当に楽しそうな顔すんじゃん。」
頬を触って自分の表情を確かめながら雨月くんの言葉に「ん?」と思った。

「わ、笑う時に表情とか、ずっと見てたの!?」
「おまっ!言い方があるだろ!それじゃ俺がただの変態じゃねえかよ。」
雨月くん、真っ赤になって反論する。
やっぱり面白い人、って思う。こういう人は好きな人種の方だ。

雨月くんの反論内容によると、たまたまみる私の顔は、いつもニコニコ嬉しそうだったらしい。
面白くて笑う時は本当に大声あげて笑うって言われた。
…そんな能天気野郎に見えんのか、私。

少し自分に呆れながら頭をポリポリ掻いていると、雨月くんは少し笑って「それはお前の良い所だと俺は思うよ。」と言う。
「そうかな。」と苦笑する私に雨月くんは「そうそう。」と笑う。

けれど、雨月くんの笑顔が一瞬で消えた。
怖い顔とか、悲しい顔、ではない。
真剣の表情で私を見つめる。
いつもなら「何見つめてんのエッチー」なんて冗談を口にすることもできただろう。
でも、今の状況はさすがにそんな空気じゃない。バカの私でもわかる。

真剣な黒い瞳。

目を逸らしてしまいそうで。でも逸らしたら負けだな。みたいなよく分からないプライドが私を支配して。
私も決して目を逸らそうとはしない。

ザァァアアッと強風が草を潜り抜け、私たちの肌に伝わるとき、雨月くんが口を開いた。

「でも、佐久真の悪いとこでもあると思う。俺は…その笑うとこ。」
「笑う所が…。」
笑うのが悪いなんて言う人、初めて見た。
皆なら、「いつも笑ってていいね。」って言ってくれる。雨月くんもそう言ってくれた。
でも、どうして?

雨月くんは私をじっと見たまま、言葉を続ける。
「佐久真はさ、いつでも笑ってるじゃん。いつでも。本当に悲しいときだって、泣きたいときだって。今だって無理して笑ってるだろ。」
「…当たり。」
私の口元がふにゃっと緩む。
分かってもらえる人がいて嬉しかったのかもしれない。
そんな私から一旦目を逸らし、雨月くんは膝に顔をうずめた。
「やった、私の勝ちだね。」
少し籠った声で雨月くんの「何が?」と言う声がしたけど、私は「なんでもー」と言うだけにとどまった。

雨月くんが顔を上げたのは、その数秒後。
すぐに声が発せられる。

「…俺に全部話さない、か?」