BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 神様、それはあまりにも不公平です。 ( No.72 )
- 日時: 2012/06/29 21:01
- 名前: 夜藍 (ID: eVWzcu6j)
- プロフ: 期末テスト…終わった…色んな意味で…
番外編 「夏祭りと私と」 五話。
立ち上がった雨月くんと空を交互に見つめ、少し腫れてしまった目をこする。
雨月くんは振り返ってニカッと笑い、言葉を続けた。
「『人を信ずることは、もちろん、遥かに人を疑う事に勝っている』…っていうやつ。」
「…知らない。」
即答した。
私は社会が苦手だから、名言はおろか、人物を覚えるのもままならない。
そんな私が誰の言葉かなんてわかる訳もなく。
雨月くんは苦笑して「吉田松陰の言葉だよ。」と言った。
「だからさ、その場にいた奴らの事、疑う前に信じてやれば?」
「…裏切られたようなものなのに?」
「約束すっぽかされたくらいでうじうじすんのはどうかと思うぜ?」
「そりゃあ、雨月くんはわかんないよ!男子はそんないざこざないもん。」
膝を抱えて雨月くんの方を見る。
やっぱり、雨月くんは本当に不思議な人だ。
空気をよんだり、あえてよまなかったり、変化球投げてきたり、ストレートだったり。
「傷つくことを恐れて、前を見ないふりして、そんなのいつまでたっても子供のままじゃねえか。だったらそんな目に遭っても前を向いて、人を信じるくらい、広い心を持てば?」
「_________そんなの、綺麗事だよ。」
「そうかもな。でもさ、俺は思うんだよなあ。例えばさ、誰かがいじめをするなって言ったとする。皆表面上では賛同するけど、無視するなとか、悪口言うなとか…そんなの“綺麗事”って思うだろうよ。でもさ、それっていうのは仕方ない事だと思う。思うけどな…。」
雨月くんは背伸びをした後、私の顔を覗き込んだ。
「どんな愚痴を言ってもいい。悪口言わずに生きていける人なんてほんの一握り。いやそれより少ないかもしれねえ。でも、悪口言わない事を、無視しない事を、“綺麗事”って思わないくらいの世の中に出来たらいいなって俺は思う。」
「それも綺麗事じゃないの?」
「そうだな。」
ハハハハッと雨月くんは笑う。
ドン、と大きな音がして。
花火が、あがった。
* * *
夏祭りの翌日。
昼過ぎだった。
インターホンの音がして、玄関に走っていくと、そこにいたのは…
「萌香…。」
思わず、呟いた。
のんも、あーちゃんも、あの時夏祭りの会場にいた皆が私の家の前に集結していた。
一体、何?
わけがわからず立ちすくんでると。
「美琴!!はいっ!こーれーっ!」
萌香が差し出したのは、大きなクマのぬいぐるみ…と小さなウサギのストラップが二つ。
私はそれを受け取った時に気づいた。
のんが笑って私の手にストラップを握らせる。
皆がせーの、と言う声が決定打だった。
「「美琴、お誕生日おめでとうーっ!!」」
「みん…な…。」
「ごめんね、あの日ドタキャンして…萌香もアタシものんも、皆遊び歩いてたから当然の様にお金が無くてさ…。」
「そうそう。ご利用は計画的にってやつ?でね、屋台の射的で、なんとかぬいぐるみ当てよう!ってなったわけ。そしたらなんと三個も当たりましたよ。美琴の運は強いねえ〜。」
のんの言葉に、「その運は私のですー」と萌香が言う。きっと萌香が一番大きなぬいぐるみを当てたのだろう。
確かにあの時皆は射的コーナーの前で話していた。
なんだ、私が馬鹿だっただけじゃない…
「皆…ありがと…ぅ…うう…」
「美琴ー!?えっ!何で泣くの!?ええええ!?」
皆の動揺の声に、すぐに笑い泣きの状態になる。
その次の日、雨月くんと会った。
私の携帯についている二個のウサギストラップを見て雨月くんはニカッと笑った。
「な?言った通りだろ?」
「うん、ありがとう。雨月くん。」
本日は晴天なり。
私は雨月くんが好きだと言ってくれた笑顔を見せた。