BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 神様、それはあまりにも不公平です。 ( No.97 )
- 日時: 2012/11/11 15:13
- 名前: 夜藍 (ID: ty0KknfA)
第二十九話。
花火大会のあの夜、結局フィリアーはあれきり意味深な発言については話してくれなかった。
いつも通り、「さっき寄りかかってきたのはなんだ!?光、まさかお前私に惚れたのだな!?」とかそういう馬鹿けた言葉しか聞いていない。
ちなみに正確には「私にほ…」辺りで僕の膝蹴りがフィリアーの腹に深くヒットしたためそこまでしか言葉は聞いていないのだが。
いつも通り、すぎるフィリアーを僕はただただ見つめているしかなかったのだ。
別にコイツに惚れたわけではない。
ただの変態だし、本当に神様なのか聞きたくなるくらいだし。
でもキスされたとき、不覚にもドキッとしてしまったし、かれこれ結構な間一緒にいる。気にならないわけじゃない。
でもそれでも聞く勇気はなかった。
もしそれが触れられたくないものだとしたら、フィリアーのあのお茶らけた表情は見られなくなるかもしれない。
もう自分にいつも通り、接してくれなくなるかもしれない。
フィリアーに嫌われるのは怖かった。…いや、もとより人に嫌われるのは怖くて怖くてたまらない、そんな意気地なしなのだが。
フィリアーに嫌われるのが怖いと思うなんて自分はどうかしてしまったのだろうか。
別に僕、あいつの事は好きじゃないはずだ。
好きじゃない…あれ?“はず”?
おかしいな、前までなら断言できたはずなのに。
本当に、おかしいなあ…
自分のそういう変化も、やっぱり意気地なしには受け入れられなかった。
******
次の日の朝。
『読書感想文なんて高校生にもなってやらなくていいと思わない!?(`ω´#)ムキィ!』
という文章の佐久真からのメールで僕は目が覚めた。
内容にも絵文字にも激しく同意する。だが僕はもう読書感想文は終わってるんだなこれが。
あとは数学の課題だけだな、といつも通りベッドから重い体を下ろすと。
「おお、光。起きたか。」
「ぬわ…っ!びっくりさせんなよもう!!」
眼前にはフィリアーの顔があった。
以前とは違い、僕もそこまで驚かなくなった。慣れってヤツなのだろうか?そんな事に慣れたくないんですけど。
僕を近くで見つめている蒼い双眼を睨み返すとフィリアーはいつも通り笑った。
「今日も威勢がいいな、光。昨日のデレは何だったのかというくらいの睨みようだ!」
「それ褒めてねえからな?あとデレてねえし。」
口を尖らせて見せるとフィリアーはクックックッ、と不気味な笑い声を漏らした後に「朝ごはんが出来てるぞ。」と言い残し立ち去って行った。
母さんより母さんな気がするぜ全くアイツ…
そう思いながらリビングに降りようとドアに手を掛けたところで。
事件は起こった。
ガタガタガタッッ!と大きい音がしたかと思うと窓が無理矢理取り外され、黒い黒い烏の様な羽が白いシーツの上に二、三枚飛び散った。
呆然として窓を見やるとそこにはゴスロリ服の少女が窓枠に足をかけ、僕を見つめている。
そしてゴスロリ服のリボンが僅かに揺れたかと思うとやっと少女は声を発した。
「お兄様はどこにいらっしゃいますか?」
感情のこもらない、けれども凛とした声で少女は言った。