BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

亜区徒さんへ   ( No.21 )
日時: 2013/05/03 19:17
名前: マリ ◆pTJVFJNEto (ID: Da2si9iJ)
プロフ: 大学2年の宮地さん←1年のコタちゃん



//  どうぞ、泣いてください
  (傷つけた代償に、俺が君を慰めてあげるからさ )


 俺は洛山に負け、最後のWCは3位という順位で幕を閉じた。全国で3位だ、そう考えればこの涙の 意味 は大きく変わるんだろうな。でも俺は悔しい他に感じない。自分の無力さを知り、屈辱を覚え、そのまま何も出来ずに高校でのバスケとは「バイバイ」。

 まだ燻りの残っている中、俺は大学へと進学した。東京の大学を選んだのは近くて楽だという理由があった。しかしどうも、この大学のバスケ部は強豪らしい。

「どうしてバスケ部入んなかったんだよ清志ぃ!こんなに上手いんだからさー」 
「そんなことねぇっていつも言ってんだろ。俺なんか…」
「自虐的だなあ、清志は。2年になったんだからもっと胸張れってー」

 違う。本当に、俺なんて底辺なんだ。アイツらには、嫌、アイツには到底及ばない。だってあの時、アイツは全力じゃなかった。それでも俺は着いていくこともできなくて。はは、俺は自虐的でも自傷性でもない。ただの 無力 なんだ。

 体育館とボールを勝手に拝借しての練習。勿論、ペネトレイト主体だ。入学してからずっと続けて、もう2年生になった。

「宮地ー、1on1しろ!」

 体育館の入り口から発せられた声は、響きながら少し余韻を残して俺の耳に届いた。またコイツか、と溜め息をついて。
 
「敬語使え、刺すぞ!!小太郎」
「相変わらず毒舌だなー、宮地は。あはは、じゃあやろーか!」

 笑顔でそう言って俺のほうに駆け寄るそいつは、2年前よりちょっと前髪が延びて急に大人びた葉山小太郎。「あの試合」の後、強引にアドレスを聞き出されてメル友風な関係になった。でもやっぱり東京と京都は遠い。話すことはあっても、会うことはなかった。ただいつも、小太郎は「1on1したいぃ」と呟いてた。

 だから、今この距離に小太郎がいる事が少し不思議で、まだ馴れてない。まさか「宮地と1on1したくて東京の大学受けた!」なんて言ってくるとは。

俺は溜め息をついた。

「やんねぇよ。特にお前とは」


 小太郎は俺にとって、たぶん「泣く」ことの元凶みたいなやつで、小太郎と1on1とかしたら蓋が開いて涙が止まらない気がする。あの日、ブザーと共に目に浮かび、大坪の声で頬を伝うことをやめた涙が。

「宮地はさ、あの時泣かなかったんでしょ?」
「泣けるか!あんな大事な時に…」

 小太郎が俺の手からボールを取ってドリブルをつく。あの時と同じで地面に強く叩き付けられるボールは、煩い。空気が震えて、俺の涙腺を可笑しくしやがった。

「そっか。じゃーさ、宮地!」

 小太郎はボールをリングへ放る。ゴールは俺の真後ろにあるけど、ネットを通る音が響いてシュートが決まったことが分かった。

 小太郎は両手を広げて、くしゃっとした泣きそうな表情で笑った。


「泣いてください、先輩」



◆next

Re: クレイジーキャットダンス【黒バス】 ( No.22 )
日時: 2013/05/05 22:02
名前: マリ ◆pTJVFJNEto (ID: Da2si9iJ)
プロフ: 続きでっス



 小太郎もこんな風に泣きそうな顔で笑うんだな、と少し動揺した。

「だ、誰が泣くか、バカヤロー。埋めるぞ」
「あはは、やっぱりそうなっちゃう?」

 俺はもう既に泣いていた。こんな弱い自分がいることを認めたくなかったけれど、もう涙は止まらなくなっていた。小太郎は右手を俺の頭の上に置いた。触れている部分が熱く感じる。

「辛くなったら泣いてもいいんだよ、宮地」


君を感じながら、
(絶対に泣くもんか)
       って意地を張った。

◆end

 わああああああマジでごめんなさいいいいっ