BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 瓦解するアリスブルー 【BL】 ( No.1 )
- 日時: 2013/03/30 01:46
- 名前: り@ ◆N4FULXO5wE (ID: YohzdPX5)
「いい? 外には出ない」
「…、分かってます」
「あと、二階には上がらない。台所には近づかない。小説は書かない。何も考えない。睡眠薬は俺がもっていくけれど、これで全部だよね? とにかく、この部屋から出ない。寝ててくれたら、安心なんだけど」
「分かってるって」
にこり、笑って見せた。
それでも心配そうな彼に、むうと膨れたくなる。
「ずいぶんと、僕は信用がないみたいだ」
そう言うと、彼はとても困ったような顔をした。
まぁ信用できる行動をしてこなかったからだけど。
まだ痛む手首は気にしないふりをした。
それでも彼はひとしきり逡巡したあと、僕の顔をまじまじと見つめ、
何度目かの大丈夫か、を聞く。僕がまた何度目かの大丈夫だ、を言うと、彼はやっと顔をあげた。
「君がそういう気分でないなら、それはとても良かった」
そしてよそゆきの格好をした彼を、寝巻きのままで送り出す。
玄関を開けると、ひゅう、と冷たい風が流れ込んできて、二人して体を震わせた。
彼が時計を見やる。
僅かに顔を顰めたのは、そう長くはここで駄弁るわけにはいかないということだろうか。
ふう、とあからさまにため息をついた彼が僕を抱き寄せる。
「寒い」
「僕もだ」
「風邪をひくね」
「そう思うなら離してくれないかな」
「でもあったかいだろう?」
「………まぁ、」
彼からは、それから何も返ってはこなかった。
ただ強く抱きしめられ、髪を柔らかく撫でられる。慈しむようなその手つきが気に入らない、けど。
(僕も大概絆されてるなぁ)
その腕が、自分を繋ぎ止めているのだと実感する。
まるで、ばらばらに瓦解していきそうな自分を、ぎゅっと抱きしめて繋ぎ止めてくれるような感覚に陥って、
言うなれば、彼に必要とされているような感覚に陥って、
泣きそうに、安心するのだ。
長くはない、ほんの数秒。
それでも彼を愛しく思うには十分すぎて、僕は彼にねだった。
彼はそれに気付くと、にこりと笑った。
それから、ちゅっ、ととってつけたようなキザな音と共に、優しいキスが降ってくる。
「愛してるよ」
「……僕も」
また今日も、死ねないなぁ。
ぐだぐだと続くお小言なんかよりずっと、こっちの方が心に沁みるのだ。