BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 瓦解するアリスブルー 【BL】 ( No.19 )
- 日時: 2013/03/30 17:12
- 名前: り@ ◆N4FULXO5wE (ID: YohzdPX5)
- プロフ: [マギ](シンジャ)
愛とか、欲とか。
そんなものに身を任せているつもりは、全くなかった。
はず、なのに。
「なんで、私なんですか」
彼の肩越しに、窓の外の月を見上げた。
外は随分と明るい。
もし、あの窓から蛾でもひとつ、入ってきていたのなら、私の気持ちもこう沈みはしなかったのかもしれない。しかしそれは無理な話だった。
外とは反対に、部屋に灯る明かりは、燭台の上、小さく今にも消えそうな蝋燭が辛うじて視界を保っているのみだ。
ああ、こちらを訝しげに見つめるその瞳も、ひどく輝いてはいるなぁとは思ったけれど。
ただそれが見るのは私で、そして意味するのは不機嫌だ。
ジャーファルも、そんなことを問うのは、無粋なことだと知っていて聞いたのだった。
明確な答えの帰ってこないのも、シンドバッドの機嫌を僅かに損ねたのも、予想されたこと、ジャーファルはなにも不満には思わなかった。
むしろそれで良かったのだと思った。
そしてただキスを重ねる。
ひとつ、ふたつ、みっつ、
数えていて、きりがないと知るほどに。
薄く目を開くと、さっきと同じように、空の鏡は辺りを照らしていた。
見慣れた夜。
見慣れた闇。
見慣れた月。
見慣れた自分。
懐かしいほどの暗闇が空を包んでいた。
ふと怖くなって腕に目をやる。
そこに身を守るための武器はなく、ただ点々と朱の花弁が散っているだけ。
色彩は似ていて、それでいて何もかもが異なっているように見えた。
それにやっと、自分が今いる場所を知る。
少し吐息が漏れたのが分かる。
溺れた声は耳には届かなくて幸いだったけれど、シンが満足気に目を細めたのだけ分かった。
またひとつ、手首に花が散る。
だけれど。
己自身はそう簡単に変わることは出来なかった。
いや、現在進行形で、出来ないでいると言った方が正しいだろうか。
あるいは。
未来形で、変われるはずもないと、
「ーーーっ、」
無気力にそれに応える唇に、あてのない苦しさを追いやる。
触れた唇から、混じる唾液から、それが零れて、流れて、消えてしまえばいいと思った。
そうしてしまえたのなら、どれだけ救われるだろうか?
視界の隅、懐かしいものが横切って、ジャーファルはそれに意識をやった。
ああ、なんと卑しい。
ひらり、ジャーファルはその決して美しいとは言えない見た目に辟易した。
それは蝋燭の炎に照らされ、その禍々しい模様の羽をゆっくりと上下させる。
どこからこれを見つけたのか。
呆れるほど浅ましいことだ。
ーーーまるで私のように。
あなたの助けになりたい。
あなたのお側にいたい。
いつのまにか湧いていた感情が大嫌いだ。
けれどその感情の理由は分かりきっていて、それを押しとどめることが出来るはずないことも分かりきっていた。
蛾も、私も。
太陽の元では生きられないというのに。
惹きつける太陽に手加減する気はなくて、私たちは哀れにそれに囚われるのだ。
どうして、などと問えたものか。
ジュッという音と共に、蛾はぴくぴくと体を痙攣させると、そのうち黒く跡形もなくなってしまった。
ああ、どうか、
(あなたの瞳に、また今日も殺される)
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シンジャ推しです。
ジャーファルさん好き。
色彩が……!
好みすぎて……!
腕を上げた時の赤い紐のチラリズムに、また今日も殺される。