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『あいなし』




それこそ、"愛"が無くなったわけではないのだ。

証拠に彼は、いつもそれを辿って、ふらり帰ってくる。
赤い糸と呼ばれるそれは、今も変わらずそこにあり、僕と彼を繋げているに違いない。

(僕には、果ては遠すぎて見えないけれど)


あるに違いないそれ。

彼ばっかり、使っているそれ。
僕には全然、使いこなせないそれ。


少しばかり引いたところで、彼は帰ってこない。


こんな古い町なんかより、北風のほうが、ずっと君を惹きつけるんだろう？
ずっとずっと、知ってるよ。


……ああ、いけない。
別に君を非難したいわけじゃない。


彼は優しい人だから、この思いを全部ぶつけたら、きっともう何処へもでていかないんだろうなぁ。

それくらいには、愛されている自信もあるしね。



だけど。

ゆるりと、思考は停止。


最初からそんな度胸、ないのだし。



やっぱり僕には、赤い糸なんて使えそうにない。


(ああ、くそ)

ずいぶんと不公平じゃないか。
君ばっかり、こんな。



「くそ、」


投げ捨てるみたいに、もう一度悪態をついた。







『おもしろくない、』



(あいしてるよ、ミナキくん)





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古語。
あいなし=おもしろくない

なんか解釈違う。まぁいっかー。。



本当はこんな。

『あまりに興あらむとすることは、必ずあいなきものなり』
あまりにおもしろくしようとすることは、必ず、おもしろくないことになるものである。