BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re:    瓦解するアリスブルー 【BL】 ( No.44 )
日時: 2013/05/10 00:27
名前: り@ ◆N4FULXO5wE (ID: LdHPPNYW)
プロフ: 「カーニヴァル」[朔平朔]



知るか、って言いたいの我慢して、はいはいとか軽い返事しながら彼の背を叩いてやった。

とんとん、とんとんって規則的にして、彼を眠らせる。
すっかり彼の睡眠が深いところまで行ったのを確認してから、部屋のソファに横たえた。

明日こいつは叱られるかな。酔い潰れる前に帰れ、って。

平門に気づかれてるかどうかは知らないが、率先して酔い潰したのは朔、寝かせたのも朔だ。
だけどそんなことは知ったこっちゃない。

一人で怒られろよ、ってさっきの言葉、そのまま返す。
怒られろ、って繰り返して、じんわりと、我に返った。


っていう、先月の話。




あのまま、逃げるように艇に乗った。


「………葬式の知らせとか、こねーんだけど」

ひとり、つぶやく。

逃げて、逃げて、振り返らなかった一ヶ月がすぎて、朔はやっと、地上を見た。




葬式の知らせは、まだ届かない。



ぱちん、と爪を弾く。
きっとそこにあるであろう雲を、ぼんやり眺めた。




………多分、きっと、叱られたのだ。
彼は。
ちゃんと、、それこそちゃんと、叱られて。


だめ、だときっとはっきり言われたのだろう。
もしくは、あからさまに心配をされたのだろう。


あの人は、そういう人だから、とにかく、直線的な気持ちで、言葉で。


死ぬな、は死んでもらっては困る、で。
心配だ、は心配はしていないが、で。

単純明快。

死ぬとか言うなよ、が、
また言ってる、に変わったりしない。あの人は。


、俺とは違って。





「………は、」

は、と笑い声が漏れた。
自分の子どもみたいな口調がばからしくて。





はは、は、って繰り返して。
いつのまにか、苦しくなってた。




ばかじゃねーの。

今の自分も、
前の自分も。




ただ、無理だった。

その弱さを支えるのは。



喉の、何層にも重なった縊死痕。

酔う度に、繰り返される死にたい、という懇願。

嫌に真実味を帯びていて、だけど次の日には、それは夢だったかのよう。

痕も、命も、残している、それの分からなさ。

愛していると、囁かれる唇、囁く唇。




それは、
俺には、重すぎた。






だから寝かせて置いてきた。
全部燭ちゃんに投げた。
すべて放り出して、逃げた。

愛してる、と囁いたその記憶も押し込めて、ただ、ただ、逃げた。




なのに、

今更。



口の端だけ、上げて。

ばかじゃねーの、繰り返して。







弱いのは、どっちなのか。






「………帰ろっか、」