BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 片耳ピアスの陶酔 ( No.90 )
- 日時: 2013/11/28 00:10
- 名前: りー ◆N4FULXO5wE (ID: 6FfG2jNs)
「あ、でも、その告白してきた子なぁ、多分あれ、優の高校んときの彼女の妹やわ」
帰りがけに、日々先生が発したその言葉は、いろんな意味で真琴には驚きだった。
「………先生彼女いたんですか?」
「ん、いたよ? てかそこ??」
ああいや、違う。
思わず心の声がそのまま言葉になってしまって、真琴は少なからず焦った。
言葉を選ぶのは、いつだって面倒だ。いっそ心全部言葉になってしまえば、とも思うが、それをするには自分たちにははばかるものが多すぎた。
我が恋人はゲイだと思っていたから、彼女がいたことに驚いたなどと、どうして言えようか。
「どっちも驚きましたよ」
カエルの子はカエル? とにこり笑ってみせれば、なんか違うと笑われる。
「でも榎本先生に彼女さんいたってことのほうが驚きです。。」
「えっもてなさそうと思う?」
割りと人気はあったほうやよ、と言う日々先生は、人当たりはいいし、綺麗な顔してるやん?と素直に彼を褒める。
それは、そうだ。
欲目かもしれないが、もてなさそうだと、思ったわけではない。
「や、そーゆうんじゃなくて」
だったら何を言えば、と自問して、女の子のこと、守るってのとはちょっと違うじゃないですか?と付け加えた。
真琴も出会った時は彼を、なんでもそつなくこなしそうだなんて思ったけれど、いま彼を例えるならば、お姫さまとかいう言葉を使いたいと思う。
案外、あのひとはワールドイズマインで甘えたで繊細だ。
"お姫さま"は、さまざまの意味で、あながち間違ってもいない。
日々先生は、真琴の言葉を頼りないという意味ででも受け取ったのか(頼りがいがあるとは真琴も思わないけど)
「あれでも大人になったほうやよー」なんて、眉だけで困った顔をした。
「でもそういうの、好きな子はおるやんかー? 放っておけん的な、??」
そう笑って、まぁ俺もやけど、って自然のことのように言う日々先生に、真琴は榎本先生の影を見た。
ただの幼馴染だ、とは言っていたが、いつか聞いた榎本先生の話によると、ふたりとも地元の地主の跡取りで親同士も交流があったという。加えて虚弱体質で幼稚園を中退した榎本先生を外に連れ出したのは日々先生だとか。
彼はきっといろんな意味で、先生を外に連れ出した。
だからまぁそこそこ仲はよかったんじゃないですか、と滅多に友達の話をしない榎本先生がそう語ったのを思い出した。
そして、ああ自分もなんだろうな、ってひとり苦笑した。
彼を放っておけないのは。
「なんか、分かります」
立ち上がる気もしないままに、真琴はばいばいってソファに寝転がったまま手を振った。
手を振りかえした日比先生は、俺が言ったとかゆーなよ、と笑って扉を閉めた。
彼が帰ると、真琴はひとりになった。
予定ボードによると、こいびとが会議から帰ってくるまであと15分。
(てか、先生)
(ーーー彼女いたんだ)
先生がいつも使っている柔らかなクッションに顔をうずめると、ほんのりと彼の匂いがする。あたたかい。
彼の気持ちを疑うとか、そんなじゃ、ない。ぜったい。ちがうし、ちゃんと愛されてる、そう自覚はあるから、それだけで、ほんとうに、充分なんだけど。
(あのひとがバイセクシャルだったの、しらなかった)
そんな気持ちを抱く自分が間違っているとは知っていた。
ほんのすこし、さみしいだなんて、そんな浅はかな気持ちが、分離したような心の端に浮かんで、すぐに消した。
//
やーっと日々先生のターン終わった!
次から榎本先生でる(´∀`*)
せんせいは、小さい頃めっちゃ身体弱かった設定。いまはそんなでもない。でもストレスでお腹痛くなっちゃう人なのね。
今回は二人に先生について語ってもらいました。
あと病気設定の候補的なやつで、先天性免疫不全症とかいいかなーとか思ったけど、そこまでいくと本当に弱いなと思ったから自重しました。時間があったら別の子で書こうかな。、X連鎖性低ガンマグロブリン血症とか。。遺伝形式とか症状とかがすごいいい感じの病気。。
- Re: シュレーディンガーの猫 ( No.91 )
- 日時: 2013/11/30 19:14
- 名前: りー ◆N4FULXO5wE (ID: PLGY6GgC)
修学旅行の夜に、同じ部屋の男子三人が女子の部屋に遊びに行くのを、体調がすぐれないという口実で見送ると、部屋のベッドでセックスをしているやつらがいた。
電気をつけているはずなのに、なぜか薄暗くて、顔が知れない。
真琴は叫びもせず、ただぼんやりして驚いた。
いや、驚いたことは驚いたはずなのに、どこか頭がぼんやりとしていて、それをただ見ているという以外の発想が思い浮かんでこなかった。
「……ん、あぁっ」
高い声で鳴く、女。
回ってくるエロビデオなんかは見ることなく回していたし、修学旅行は上記の理由でいかがわしいDVDをみることはなかったから、実際の女のそういう声を聞くのは初めてだった。
真琴は一歩二歩と近づくが、ふたりはこちらに気づくことなしに行為を続けた。
女はいやらしい声をあげ、赤い舌がちらりちらりとのぞき、にじんだアイラインに涙が落ちる。
「や、ぁッ……」
いやだ、と拒絶でない拒絶の言葉が、真琴の心臓のどこかを揺さぶって通りぬけていく。
それは性欲といったものだったか、理性といったものだったか。
びりりと抜けたそれに、真琴は気づかれないようにごくりと唾をのみ下した。
あつい、と思う。
だけどその「いやだ」だけはなぜかどこかで聞きおぼえがあって、今さらに、目を逸らさなければという警告が頭を駆けた。
逸らさなければ、逸らさなければ、と急にそれが警鐘を鳴らし真琴はびくりとしたが、今度はぼんやりしたのは意識ではなくて身体の方だった。
身体がすこしも動かないことに気がつく。
まるで金縛りにあったように、視線さえ動かすことが出来ない。
その視線の先で、絶頂に近いのはふたりだった。
のけぞらされた白い喉元が、誰かに重なる。
そこにあるはずの喉仏は今はなく、それがひどく残念だ。
美しいその皮膚に、噛みつきたい。
どくり、とあらぬところで、拍動を感じた。
滾る。
女の眉間に、きゅーっと苦しそうなしわが寄る。
悲鳴に近い嬌声。
近いのだ、と分かった。
あつい、あつい、
(それがどこかなんて、)
男が、唇をその耳元に近付けて、囁いた。
「あいしてる、 」
彼女の名前を。
彼女は、「私もよ、優」と言った。
「——————っ、」
女の名前が消去されたことに愕然とし、男の名前に絶望した。
これは夢だ、と知る。
わかればこっちのものだ。
ぬめつくような粘着質の夢から這い出す。
あ、だめだ。気持ち悪い。
「…………う」
現実に這い出ると、そこはすでに夜の帳に包まれていた。