BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: GL・百合『落としたら壊れちゃうんだよ』 ( No.4 )
日時: 2013/07/24 16:27
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)

   四

朝が来てしまった。

部活を辞めたわたしは、今日からまた居場所のない自分に逆戻りだ。

昨日の朝は昨日の朝で、自分に合わないと分かった部活を続けるべきなのか悩んでいたと思う。

辞めたら辞めたで、居場所のない自分に悩む。振り出しに戻っただけだ。


「おはよー、長南!」

コナカとセブンイレブンが見える十字路の交差点に、友達の沢(ザワ)が立っていた。

この子はほんとは石沢だけど、ザワと呼んでいる。
中学校の入学式で会話したのがきっかけで、その後も三年間ずっと仲が良かった。

色々あってわたしは高校に上がったら新しい友達を作るつもりでいた。
でもうまくいかず、今もこうして同中の友達と付き合っている。

「部活の調子はどうよ」

「うん。まあまあかな」

わたしは嘘をつく。この話題はそれで終わった。

「昨日の夜もずっとミキからメール来ててさー。例の、バイト先の先輩の話だよ」

沢がそう切り出すと、わたしは「また始まったか、その話」と心で溜息をつく。

ミキというのは、わたしたちのもう一人の友達だ。
わたしと沢とミキ。この三人は中学校の時いつも一緒だった。周りにも三人でワンセットみたいに思われていた。

今から思えば狭い交友関係だった。その代わり、固い絆はあったと思う。

高校生になってバイトを始めたミキだが、バイト先の先輩を気に入ったようで、わたしや沢にその話ばかりする。
沢はそれを「ウザい」と感じ始めていた。

「その先輩がさ、他の子より自分に話しかけてくることが多いとか、倉庫の仕事を手伝ってくれるっていうのよ。何それ、相手も仕事でやってるだけじゃないの。自意識過剰だっつーの。ミキがそんなにモテるわけないじゃん。あいつぜってー誇張してるよ」

最近の沢はミキの悪口も平気で言う。

ただそれは悪口でありながら事実でもあった。

付き合いが長過ぎて気にもならないけれど、ミキの容姿は客観的評価によると「上・中・下」の「下」にあたるらしい。

また、ミキは誇張癖というか虚言癖というか、嘘か本当か分からない自慢話をよくする。

「わたしがバイトも部活もやらないで暇だからって、ミキから自慢話ばかり聞かされてウザいんだけど。長南、代わってくんない?」

「あはは。ミキも沢が相手の方が話し易いんじゃないの。わたしのとこには普段からメールなんか送ってこないし」

わたしは軽く笑っておく。
でもミキだって、やっぱり沢が人のよさそうな雰囲気を持っているから話し易いんだと思う。
ミキはわたしより沢の方により親しみを持っている。それはそれで少し寂しいけど。

「こっちだって適当に合わせるの大変なんだよ? 本当かどうかも分からない話ばかり聞かされてさ。もう告白しちまえばいいじゃん。言ってることが嘘じゃないならさ」

沢は「ほんとめんどくさい」と嫌そうな顔をした。中学時代には見せなかった顔だ。

昔なら友達の欠点もからかい半分に笑いのネタにできたけれど、今はこういう会話が怖いって思う。


わたしが話を広げようとせず黙り込むと、沢は「話に乗ってこいよ」とばかりに非難めいた視線を向けてきた。