BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 『落としたら壊れちゃうんだよ』0727UP ( No.6 )
- 日時: 2013/07/27 18:30
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
六
ミキの性格に問題があることはわたしも中学の頃から薄々と感じていた。
沢も同じだったと思う。わたしがミキについて思うところを話したら、きっと「そうそう。わたしも思ってた!」と言ってくれるだろう。
でも中学生のわたしたちには、「本人の居ないところでそういう話をするのは良くない」という道徳感のようなものがあった。
自分が我慢すればいいことだ。
友達の欠点ぐらい、許してやりたい。
そう思っていた。
しかし中三の終わりになって初めて沢はわたしに不満をぶつけてきた。
原因はミキが同じ塾に通う男の子を好きになったことだ。
勉強を教え合っているとか、いつも一緒に帰るとか、そういう話をミキは自慢げにするのだった。
やっぱりその話にもおかしな点はあった。
ミキが言うには、彼はとてもカッコよくて、頭もよく、県内でも有数の進学校を受験するらしい。
ミキは彼と勉強を教え合っていると言ったが、学校でのミキの成績を考えれば、彼と釣り合っているとは思えなかった。
ある日、ミキが彼とキスしたという話を沢にした。
日曜日に彼の家へ遊びに行き、勉強したりゲームをしたりした後で、キスをしたという。
沢は真顔でミキに問い詰めた。
「それ、日曜の何時頃なの」
ミキは浮かれた顔をしたまま「二時頃」と答えた。
「うちのお母さん、ちょうどその時間に、駅前のパルコでミキを見たって言ってるんだけど。ミキのお母さんも一緒だったって」
そう言われてミキは黙り込んだ。
沢は険悪な顔つきで、さらに問い詰める。
「チューまでする仲だったらさあ、彼の写真とか持ってないの? 今、携帯に入ってない? それか、今度その彼をわたしにも紹介して?」
わたしは背中に汗をかきながら、二人のやり取りを見ていた。
ミキはわたしたちとは違う高校を受験する予定だったから、沢にとっては、中学卒業と同時に離れ離れになってしまうミキの欠点を、最後に直してあげようと、厳しくしたのだろうか。
あるいは、ただ単に、ミキに彼氏ができそうなのが悔しかったのか。妬みの気持ちだったのか。
二人とも恋愛に興味がありながら中学三年間、男子に縁のないひとたちだった。わたしもだけど。
結局、ミキは曖昧な返事をするだけで、答えを聞くことはできなかった。
しかし、そのあとすぐにメールで、わたしにだけ聞かせてくれた。
「彼のことはわたしから振った。やっぱり男はめんどくさい。だから振った」
ミキに男の子を振れるほど器量があるとは思えなかった。
これは「彼とは関係を絶ったから、証拠を見せろとか言われてももう無理」という意味なんじゃないか。
わたしはそうも思ったが、やんわりと返信するしかできなかった。
ミキはどうして、自分の信用をなくすような嘘ばかりつくの。
そんなことして何になるの。
わたしは自分が嘘をつかれる不快感より、ミキのそういう性格が悲しかった。
ところがミキは自分が友達に言った言葉もすぐに忘れてしまう性格なのか、一ヶ月後にはこうも言った。
「高校に入ったら彼氏できるかなあ。わたし、早くキスとか経験してみたいよ」
矛盾だらけで、意味が分からなかった。
わたしはミキのことで悩んでいたのだ。
沢がミキと喧嘩するのを見て心を痛めてもいた。
それなのにミキは自分が言ったことなどすぐ忘れている。
二月になり、ミキは志望校をドタキャンしまくって、わたしや沢と同じ高校を受験した。そして同じクラスになってしまった。
四月が来て、今度は沢の醜い姿を見せつけられる番だった。