BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 『落としたら壊れちゃうんだよ』(0817UP) ( No.17 )
- 日時: 2013/08/17 07:38
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
十四
「アダルトじゃないよ」
あおぎりはパラパラっと、最後までめくり終えると、その雑誌をビニールに詰める。
ビリッと音を立て、セロテープが切られた。
「DVD付きの雑誌はね、ディスクが抜き取られてることもあるから、チェックしてるんだよ」
あおぎりはまた他の雑誌をめくる。今度のも、若い女の子の肌色ばかり。
わたしの顔色に気づいたのか、あおぎりがピタッと手を止めた。
「ちょっと長南、なんで照れてるの? 顔、赤いよ?」
「そんなこと……」
「わたしだって仕事でやってるだけなんだから。それに、エグいのはおじさんがより分けてくれてるから入ってないし。高校生が見ても大丈夫なやつだよ」
確かに、あおぎりのめくっている雑誌では、女の子はみんな何かしら布をまとっているし、卑猥なものではないみたいだけど。
「どうしたのさ、グラビア見たくらいで顔を赤くして。男子中学生じゃあるまいし」
「うん。そうなんだけどさ……」
わたしはとっさに顔を隠す。
あおぎりに顔を見られるのが恥ずかしかったし、あおぎりを直視し続けるのも恥ずかしかった。
だってわたし今、あおぎりの裸を想像してしまったんだもの。
ああ、ダメだわたし! 裸じゃなくて、せめて水着姿くらいにしておかないと。
クラスの男子の中には、一度くらい、あおぎりの裸を想像した子が居るのだろうか。
あおぎりと付き合ってみたいとか、そう考える男子も居るのだろうか。
キスとか、それ以上のことしたいって思ってる男子も……。
瞬間、頭の中で血液がドロリとにごり、貧血でも起こしたみたいにクラクラ来た。
「現実」の重みが肩にのしかかり、押しつぶされそうになる。
「この子なんか、わたしらと同い年くらいなのに、おっぱい大きいよね。男は大きいの好きっていうじゃん」
あおぎりは自分には何の関係もないかのように、醒めた目で雑誌をめくる。
「長南はどうなの? スリーサイズとか」
あおぎりがさらっと聞いてくる。
わたしは「え!」と大きな声を上げ、頭のてっぺんから湯気を出す(くらいに恥ずかしかった)。
「なんだ、言いづらいの? じゃあわたしから言うよ。わたしは上から……」
「だーーーーーー! 言わないでいい! 言わないで言わないで! 言わないでいいから!」
わたしはあおぎりの言葉を遮るように手をかざし、もう片方の手は、自分の耳をふさいでいた。
「アッハハハハ。そこまで恥ずかしがることないじゃん。よっぽど言いたくないんだね、長南は」
あおぎりが、わたしのリアクションを楽しむように笑っている。
本当はわたしだって知りたい。あおぎりの身体のこと。
でもそれは、知りたいけど知ってはいけないというか。
知らないままにしておきたいっていうか。
なんだろう。なんというか……そう、知るのが“もったいない”んだよ。
「怒らないで長南。ほら、お菓子あげるから」
あおぎりがカウンターの下から、一口サイズのチョコレートを出す。
「怒ってないよ。っていうか、なんで仕事中にチョコ食べてるの」
「だって、店内が静かだから、お腹が空くと鳴っちゃうんだよ」
わたしはそれを一つもらって口に入れる。
友達との集合時間が、ちょうどよかった。