BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

『落としたら壊れちゃうんだよ』0914UP ( No.38 )
日時: 2013/09/14 23:42
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)

   二十三

「ど……どういうこと?」

「長南は、自分は正しいと思ってしてるのかもしれないけどさ……やっぱり場の空気って、あると思うんだよ。わたしや五十嵐さんと居る時も、自分だけつまらなそーにしてさ。なんていうか、見てると冷や冷やする……」


わたしがKY?

沢と五十嵐さんがミキを笑いモノにしている時に、わたしだけ乗ってこないから?
わたしがミキを放っておけなくて味方したから?

それが沢にはKYに映っていたっていうの?


「そんな……そんなこと、ないよね?」

わたしの問いかけに、沢は黙って首を横に二回振った。

今、沢が言ったことは事実なんだ。わたしは客観的にそう見えていたんだ。

「ミキだけじゃない。このままだと、あなたまで標的にされちゃうよ」

普段はおどけた笑みばかり浮かべている沢が、この時は真剣そのものだった。


わたしと向かい合って立つ沢の後ろには道が伸びていて、さっきから車の一台も通らない。

遠くで五十嵐さんがわたしたちを見ていた。

こっちの会話なんて聞こえるはずもないのに、目では沢と同じことを言っているように見えた。


沢はちらっと五十嵐さんを見て、もう一度わたしの方を向いた。

「あのさ、後で携帯の方にURLとパスワード送るから、見て」

「……URL? パスワード? 何のこと?」

わたしは聞いてみたが、嫌な予感ばかりして……というか絶対にロクなことじゃないので、それを知るのが怖い気がした。

「わたしもさ、ミキのことは本当にムカついてたけどさ、それも今日までのつもりだったよ。参った。こんな大事になるなんて思ってなかったからさ……」

沢が目をそらして、困ったように唇をとがらせる。

「とにかく帰ったら見てみてね。そして、できれば参加して! 長南も!」

なんのことか分からなかったが、沢は走って五十嵐さんを追い駆けてしまった。

そして追いつくといつものように笑顔に戻って楽しそうに……。


わたしもなるべく何も考えないようにし、二人と無難に帰ることにした。



——————



夕飯の後、ベッドに寝転がって、携帯をにぎりしめていた。
液晶画面には沢から送られたメールが表示されている。

沢が送ってくれた謎のURL……。怖くてクリックできない。

それでも後には引けないと思い、クリックしてみた。


【ミキ観察日記】


——みたいなタイトルのブログだった。

ハンドルネームにしてあるが、管理人の自己紹介を読んでみると、どうやら五十嵐さんの作ったページらしい。


「なんなのこれ」

わたしはすぐ沢に電話して聞いた。

『なんなのって、見ての通りだよ。わたしも今日の昼休みに教えてもらった。長南もね、一回くらいはコメ入れといた方がいいよ』

「なんでさ。どうしてわたしがこんなブログにコメントしなきゃいけないの」

『あのね……わたしだって、もしも長南の話とか振られると、困るんだよ。ミキの時はわたしも五十嵐さんに合わせてたけどさ、もし長南まで裏であれこれ言われるようになったらどうしようって、不安でしょうがないんだ』

「そんなことって……」

『いいから。わたしにパスワード教えてもらったってことにして、コメント一回くらい入れておきな。早めにね』

わたしは何と言っていいか分からず、電話を切った。


再び、沢が教えてくれたURLへと飛ぶ。