BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 君と僕と、ピンクとグレー。 ( No.1 )
- 日時: 2013/08/11 08:02
- 名前: 冬華 ◆tZ.06F0pSY (ID: 3Sm8JE22)
「……また来たの。」
買い物袋を手に下げたその人が今日もまたぼくの部屋に。
お仕事の恰好のまま髪形だけちょっと崩した姿は、大体いつもの通りだった。
カーテンも閉まっていて、灯りも小さなランプだけのこの部屋。ごみの溜まった道すらない部屋。
汚いの、嫌いでしょ?さっさと帰れば?
「だって今日は土曜日でしょう。」
だから?
「あなたはきっと覚えてないでしょうね。」
ぼくの言葉に諦めたように 前、酔っ払ってか否か私に来いって言ってましたよ って呟く。
目も合わせずに、確認も取らずに、毎週毎週飽きもせずまぁ。ぼくのグレーを盗っていくの、楽しい?
「どうせまたカップラーメンとインスタントばかり食べていたんでしょう、」
「ちーがいますー、カップラーメンもインスタントも食べてませんー」
「じゃあ何を?」
無言。 それがうまく 何も? と答えてくれたようで彼は顔をしかめてぼくの頬に手を伸ばした。
むにょーん、両手で横にひっぱられる頬、じーっとこっちを見つめる怒った眼。こわぁい。
「いひゃいれす、」
「そうですか。じゃあ早いとこ思い知ってください」
「いだぁっ」
思いっきり、ひっぱられて離された。思わずじわぁ、と両目を包んだそれをしぱしぱと隠す。
乾ききった口の端がひっぱられたせいでビリビリと痛んだ。
「まぁちゃんと食べていればそんなに肌が乾燥したりしませんもんね」
にっこり、天使のように微笑む悪魔。細まるヘーゼル色の瞳。てめぇ聖職者の癖に。
「きちんと食べなくちゃ生物というのは死ぬんですよ、分かってます?」
「わぁかってますー。だからこそ食べないんですよ、分かります?分かりませんねぇ。」
肩をすくめて笑ってみせると、がしりと顔をつかまれて今度は半ば無理矢理にキスされた。
「安心しなさい、神様はろくでなしを早いうちに引き抜いたりはしませんから」
「あーそーだったね、お金出さないと何にもしてくれないもんねー神様は」
へらっと笑ってみせるとこら、っておでこがおでこにごんされる。
仕方ないからその胴体にむぎゅうと抱きついてみるとやっと顔が大きな手から解放された。
ぼくの部屋着より、しっかりとして固い素材。すん、と鼻を鳴らすとなにやら清潔な匂いがした。
その胸に耳を押し付けて。とくんとくん、響く優しい音。君の命はぼくのと違ってピンク色だ。
優しいこの音が、ぼくの中のグレーをピンクに侵食してく。それがいつも怖くて、ほんのちょっぴりくすぐったくて。
「てゆか、ずっと思ってたんだけど牧師さんが男と付き合ってていいの?」
「いやまぁ、よくはないでしょうね。 でも慈悲深いお方ですから。」
「あ、そ」
ぼくがちょっと笑うと、彼も安心したように笑った。 ……なんとなく、気づいては、いる。
ぼくをこの世に繋ぎとめるのは、ケチな神様なんかじゃない。臆病さでも 恐れでもなくて、そう。
くやしいけど多分、認めたくはないけどやっぱり、このおせっかいで優しい彼が。
淡くて強い命の色でぼくのグレーが引き抜かれちゃわないように、ぎゅうぎゅうぼくを縛るんだろう。
言葉には、出来ないことばかりだけど。 たまには、素直にくらいなれたらいいよね。
それがきっと、君と僕のピンクとグレー。
>>天月さんの歌っている 猫にオレンジ という歌がイメージ。。
なんかだいぶ違うことになった気もしますがねー。
とりあえず題名に沿ってるっぽく。。